長編その1 @

□同棲開始
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みんなはテーブルの上に広げたお菓子を食べながら話し合いを始めた。

「普通はどうすんの?やっぱり警察?」
「調べてみましたが付き纏い、というには期間が短いかもしれませんね」
「メッセージも特に脅迫ととれそうなものはないな…」
「こんなことしたら余計に嫌がられるのにねぇ」
「でもこれ、家に行ってるだろ?これじゃダメなのか?」
「勝手に侵入、となれば別でしょうがこの程度では厳重注意くらいでしょうし…あ、すみません」

トキヤは自分の失言に頭を下げた。

「いえ、あの、確かに直接的な被害はなくて」

香も皆の輪に入り答えた。

「家にも帰ってないので、被害があるかどうかもわからないですし…」
「やっぱり家に行ってみようよ。男が行ったらもしかしたら諦めるかもしれないし!」
「だ、ダメです!そんなことさせられません!」

音也の提案に香はハッキリと拒否をした。

「もし、怪我とか、それじゃ済まないことになったら…」
「そうだね。それに、もしオレ達の写真でも撮られたらレディを強請るネタになりかねない」

レンは少し考えてからパチンと指を鳴らした。

「ジョージに頼もう」

香は初めて出てきた名前に首を傾げた。
「それがいい」と全員が頷いて、レンはジョージに連絡をすると数分でジョージは那月の家にやってきた。

「このお嬢さんですか」
「は、初めまして、河嶋香です」

香はその背格好に圧倒されながら頭を下げた。

「そんなに固くならないでほしい。事情はわかった。一緒に家の様子を見に行けばいいのだな」
「ああ。何かあっても傷一つつけさせないでね」
「もちろんだ」
「香ちゃん、大事なものとかお洋服とか全部持って帰ってきてくださいね」
「量が多いなら後で私がまとめて送ろう」
「そ、そんな、あの、持って帰れる量にします」

香は恐縮しながら、ジョージに連れられて自宅へ戻ることにした。
2人を送り出し、また6人は作戦会議を再開したが、那月は小さくため息をついた。

「…四ノ宮、どうした?」

那月の様子に、真斗が聞いた。

「…こういう時に僕がついていけたらなって」

寂しそうに言う那月に、翔は仕方ないだろと背中を叩いた。

「気持ちはわかるけど、ここでお前が出しゃばったら余計悪い方向に行くかもしんねえだろ?」
「そうだよ、シノミー。レディだって本望じゃないだろうさ」

2人の言葉に那月は頷いた。

「四ノ宮。大なり小なり、俺たちの職業で悩むことは今後もたくさんあるだろう。もどかしいことも、悔しいこともあるだろう。だが、それでも2人でいる事が大事なら耐えねばならないこともある」

真斗の言葉にトキヤも頷いた。

「その覚悟がないといけませんよ。もし、それでも悩むことがあるなら」
「俺たちにいつでも相談してよ!!」

トキヤの言葉に被せて音也が身を乗り出した。

「たくさんやなことあるかもしれないし、やなこと言われちゃうこともあるかもしれないけど、俺たちはいつだって那月の味方だから!」
「そうだぜ!那月!」
「ああ、そうだ」
「当然さ」
「そうですね。きっと愛島さんも同じことを言うでしょう」


那月は大きく頷いて、一番近くにいたトキヤと翔をまとめてぎゅうっと抱きしめた。

「ありがとうございます!!」
「四ノ宮さん!!し、しの、四ノ宮さん!!!」
「痛い痛い痛い!那月!痛いー!!」
「良かった、テーブルの反対側で」
「四ノ宮、嬉しいのはわかったから離してやれ」
「シノミー、もしかしてその調子でレディを抱きしめたりしてないよね?」

那月はパッと手を離してふふっと笑った。

「香ちゃんはふわふわの綿あめさんみたいですから、優しーく抱きしめてますよ〜」
「俺も!マシュマロみたいだと思って優しくしてくんないかなぁ!」

翔は那月のハグで痛めた背中を真斗にさすってもらいながら苦情を言ったが、那月はニコニコしているだけだった。
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