長編その1 @

□広がる輪
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数日後、香は仕事中の那月に棚が完成したことをLINEで報告した。

「見てください、すっごく素敵に出来ました」

那月は先に衣装に着替え終わっている真斗とトキヤに写真を見せた。

「すごいですね。こんなに立派なものを作るなんて」
「ほう。色は明るいのにどこかシックな感じもするな」
「ふふふ、ありがとうございます」

那月は自分が褒められたような気持ちでお礼を言った。

「どれどれ?わぉ、これはすごいね」
「レンくん」

那月の背後からレンが覗き込み、その後ろから音也とセシルもやってきた。

「見せて、那月!」
「ファンタスティック!素晴らしいですね!!お店で売ってるものみたいです!」
「本当だー!すごい!!」
「ふふふふ」
「なんでお前が得意げなんだよ」

翔が那月につっこむと、那月は「僕も少し手伝いましたから!」と笑顔で答えた。

「そこに色々飾られていくのか。飾った後のものも見たいものだな」
「そうですね。どんなふうに飾られるのか、楽しみですね」
「僕も楽しみです。香ちゃんはどう飾るか考えているみたいなんですけど、まだ僕にも教えてくれないんです」

那月がそう言ったところで、ADに呼ばれた。
その頃、香は完成したばかりの棚に一つ一つ丁寧にCDを並べていった。
すごく楽しくて、早く那月に見せたいと思っていた。

「帰ってきたらびっくりするだろうなぁ」

香はきっと那月はすごく褒めてくれて、自分のことのように完成を喜んでくれるだろう。
そう思うだけで、すごく嬉しくて、すごく幸せだった。

那月が帰宅したのは23時を過ぎていた。夕方に遅くなりそうだからご飯はいらないことと、先に寝ていてほしいと連絡を貰っていた。
那月がそっと静かにリビングに行くと、ソファでぴよちゃんのクッションを抱っこしながら寝ている香が居た。

「香ちゃん、ここで寝ると風邪ひきますよ」

那月は香の肩をトントンと叩くが香はぐっすり眠っていて起きる様子はなかった。

きっと帰ってくるのを頑張って待っててくれたんだろう。

そう思うと愛しさが込み上げてくる。
優しく抱き上げ寝室に運ぶと、気持ちよさそうにごろんと寝返りをうった。
その寝顔にそっとキスをして、静かに寝室のドアを閉めた。
香の部屋を開けてみようか、とも思ったが明日の朝、香にちゃんと見せてもらおうと思って部屋は開けずにおいた。
明日の朝、きっと満面の笑みで「じゃん!」と見せてくれるだろう。
想像しただけで可愛いと思える。
それがすごく嬉しくて、すごく幸せだと思った。
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