長編その2

□遊園地
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無事にクップルを見つけたことを連絡すると、寮の前でみんなが待っていてくれた。
クップルを抱っこした香の姿を見つけると、みんなホッとしたように笑って駆け寄った。

「良かった、クップル〜!」
「どこにいたの?」
「あっちの森の方。怪我もしてなくて良かった」
「その子がクップル?かわいいね!」
「全く。心配かけておいて呑気だな」
「ごめんねって言ってます。それとお腹空いたって」

那月がクスクス笑いながら通訳すると、香もクスクス笑って「帰ってご飯にしようね」と優しく撫でて頬を擦り寄せた。

「お騒がせしました。ごめんね、疲れてたのに」
「ううん!気にしないでいいよ」
「もっと早く話してくれたら良かったのに。飼い主が見つからないのなら次の飼い主を見つけないといけないだろう」
「そうよね。ずっとここでってのは無理があるわよね」
「うん…。どうしても難しかったら、実家にお願いしようと思ってるの」
「そうか」
「でも実家にはうどんがいるから、ギリギリまでは…」
「うどん?」
「かおりちゃんちのわんちゃんですよ」
「うどんという名なのか?」
「うん。……変?」
「あ、いや」
「変よ」
「あははは!友千香ハッキリ言い過ぎ!」
「クップルも危うく、おかきになるとこだったのよね」
「おかき……ふふっ」
「んふふ。おかきも可愛いですよねぇ」

みんなに笑われると、やっぱりおかきにしなくて正解だったか、と思って黙ってクップルをよしよしと撫でた。

「あ、そういえば、学園に褐色の肌の外国の子っていますか?」
「外国の?いなかったと思うけど」
「Sクラにハーフの子はいたけど褐色ではないか」
「さっき森で会って、クップルはこっちだよって教えてくれて…英語じゃない外国語で話してて」
「やだ、また変なの見たんじゃないの?」

友千香がそう言うと香はさっと顔を青くさせた。

「渋谷さん」
「あっ、ごめん」
「不審者かもしれん。いくら学園内とはいえ遅い時間に出歩くのはやめたほうがいいな」

真斗は香に何もなくてよかったと言った。
不審者、という感じではなかったけど、確かに部外者が出入りしてるかと思えば気をつけないと、と頷いた。

「じゃあ、遅くなっちゃったし、早く休もう!」
「かおりちゃん、また明日ね。おやすみ」
「うん。ありがとう。おやすみ」

香たちが女子寮に戻っていくのを、那月は心配そうな目で見送った。
香は次の日からしっかり戸締りをしてクップルに「もう勝手にいなくなったりしないでね」と言ってから出かけるようになった。
そして体育祭を次の日に控えた5月最後の日。
今日は最後の調整と、みんなでリレーの練習と二人三脚の練習を軽くやって、明日に備えてしっかり休もうと練習は早めに切り上げた。

「かおりちゃん。七海さん。明日は楽しみましょうね」
「そうだね!ここまできたらさ、勝つ事も大事かもだけど、それより楽しんでやろうよ!」
「そうだな。楽しんだもの勝ちだ」
「そうそう!青春ごっこって言われたってさ、青春しちゃおうよ!」

4人にそう言ってもらえると、香と春歌はホッと出来て笑顔で頷いた。
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