長編その2

□砂月
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次の日、砂月は仕方なく制服を着て教室にやってきた。
乱暴なドアの開け方に、周りを睨みつけるような視線にみんな距離を取っていたが、音也と真斗は砂月に話しかけた。

「砂月!こっち!」
「あ?」
「砂月の席!こーこ!」

砂月は舌打ちをして音也の隣に座ると音也は砂月に昨日の課題やった?と聞いた。

「は?やってねえよ」
「やってないの?やば。りんちゃん怒ると怖いよ〜」
「知るかよ」
「四ノ宮。この前借りていた本だ。ありがとう」
「あぁ?」
「なかなか興味深い本だった。他にも何かおすすめがあったら教えてくれ」
「…那月に聞けよ」
「そうか。では、そう伝えておいてくれるか」

真斗がそう言うと砂月はめんどくさそうに視線を逸らした。
香が春歌達と教室に来ると、砂月の姿を見つけてすぐに駆け寄った。

「砂月くん」
「……」
「砂月くん、おはよ」
「……」
「ちょっと!おはよって香が言ってるでしょ!返事くらいしなさいよ!」
「あ?」

友千香が砂月に怒ると、砂月は友千香を睨みつけたが友千香は全然気にしてない顔で「何よ」と見下ろした。

「おはよう。って言ってんですけど?」
「………ちっ」
「ちっ、じゃなくて?おはよう?」
「うっせえな!おはよう!これでいいか!!」
「おはよ」

友千香はにっこり笑って手をひらひらさせて香と春歌を連れて自分たちの席に移動した。
砂月は椅子に寄りかかって不機嫌そうに長い脚を広げた。
林檎がやってくると砂月が出席してることに気がついて「あら、さっちゃん!」と手を振った。

「さっちゃん。あなた昨日サボったから、放課後居残りね」
「はぁ!?」
「連絡も無しに休むとそうなるからね。はい、じゃ授業始めまーす」

林檎は砂月の睨みなんか気にせずにいつもの調子で授業を進めていった。
砂月はめんどくさそうに授業を聞いて、時々あくびをしてはいたが時々真剣な目で聞いていることがあって、香はそんな砂月を遠くから見守っていた。
昼休みになると音也は砂月にご飯に行こうと声をかけた。

「ほっとけよ」
「なんでだよ。いいじゃん、一緒に行こうよ」
「ほら。早く行かないと席がなくなるぞ」

真斗と音也が強引に誘うと渋々ついてきて、食堂に着くと音也は大きいテーブルを陣取った。

「四ノ宮。注文の仕方を教えてやろう。あそこで食券を買ってだな」
「うるせえな」
「砂月、何にする?俺ね、カレー!」
「俺は今日はトンカツ定食にしようかと思っていたが、カレーもいいな」
「あっ!それもいいね!悩むな〜」

砂月は2人の勢いに引っ張られながら、食券の所で少し悩んでカツカレーを選んだ。

「あははは!」
「まさか一緒になるとはな」

2人もカツカレーを選んでいて、ケラケラ笑いながら食券を見せ合った。

「食べたくなったよね!」
「そうだな」

砂月は少し恥ずかしそうに舌打ちをした。
テーブルにつくと、パスタやオムライスを持って香と春歌、友千香もいつものように同じテーブルについた。

「隣いい?」

香は一応砂月に聞いたが、砂月は無視してカツカレーを食べていた。
香は少し眉毛を下げたが、気にしないようにしていつも通りの昼食の時間を過ごした。
砂月はさっさと食べて何も言わずに立ち上がった。

「もう食べたの?」
「ゆっくり噛まないと胃に悪いぞ」
「砂月くんは食べるの早いね」

砂月はみんなの言葉を無視して食器を片付けに行き、そのままどこかに行ってしまった。

「初日にしては結構打ち解けたっぽくない?」
「そうだな。まさか一緒に食事をしてくれるとは思わなかった」
「なんで3人でカツカレー?」
「俺がカレーにするって言って、マサがトンカツ定食にするって話してたら、どっちも食べたくなってさ」
「四ノ宮も同じだったのかもな」

その話を聞いて香はクスクス笑った。
午後の授業にも砂月はちゃんと出席し、放課後になると香は砂月に声を掛けた。

「砂月くん、行こ?」
「は?」
「補習。私も補習なの」
「…ちっ」

不満気だったが文句を言わずに黙って香の後をついて行った。
補習の教室に行くと、林檎はたくさんの書類をドンと机の上に置いた。

「この前出してもらった研修旅行のアンケート。集計しておいてくれる?」
「は?補習ってこれかよ」
「そうよ。これにまとめておいてね〜」
「ただの雑用じゃねえか」

砂月はそう言って林檎が出て行くと、舌打ちをしながらも書類を半分ばさっと取って机に座り集計を始めた。
香も残りの書類を持って作業を始めた。
砂月が胸ポケットからペンを出すと、香は小さく笑って「それ、私とお揃いの」と言うと「これしか無かったんだよ」と面白くなさそうに言った。
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