長編その2

□合宿後半
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香と春歌は話し合いをしながらソロ曲を作っていき、約束の1週間の最後の日。
日付が変わるギリギリまで粘り、あと数分というところで龍也にデータを送った。

「…はぁ……ギリギリになっちゃったね」
「間に合ったかなぁ…」

2人ではーっとため息をついていると龍也から電話がかかってきて、まだ全部は聞けていないがとりあえず明日の朝までにはチェックしておくからゆっくり休めと言われて、2人は胸を撫で下ろした。
お風呂の時間は過ぎてしまっていたから、シャワー室に行ってシャワーを浴びた。

「眠いけどお腹空いたぁ…」
「夜ご飯食べる暇なかったもんね」
「何かあるかなぁ」

2人でそっと食堂に行くと、食べられなかった夕食がとってあり「嬉しい!」と喜んでそれを食べた。
お腹いっぱいになると今度は眠くなって、それぞれ部屋に戻るとベッドに倒れ込みそのまま眠りについた。
次の日の朝、龍也からオッケーの返事をもらうと2人は朝ご飯を食べているみんなに楽譜を「はい!」と渡していった。

「ソロ曲出来ました!」

香がそう言って笑うと、みんなも嬉しそうに楽譜を見て喜んだ。

「すごい!春歌!これ早く聴きたい!」
「私もです」
「これが俺の…すごい…!」
「かっこいいね。早く歌ってみたいよ」
「すげー!なんかワクワクしてくるな!」
「かおりちゃんが作ってくれたの?」
「うん。那月くんと、トキヤくんと真斗くんのは私」
「音也くんと神宮寺さんと翔くんは私が作りました」

ねー!と顔を見合わせて得意げな顔をすると、みんな嬉しそうに楽譜を見ては「すごい」と褒めてくれた。
レッスン前に聞かせて欲しいとお願いされ、2人は快諾しレッスンのキーボードでみんなに一曲ずつ弾いている聞いてもらった。

「すごいすごーい!」
「これを1週間で…」
「大変だったろう」
「ありがとう、レディたち」
「あとは僕たちが歌詞をつけて完成ですね」
「それと振りもな」

頑張ろう!とみんな気合いが入り、レッスンが始まるまでそれぞれ楽譜を真剣に見ながら歌詞を考え始めた。

「あ、そうだ。カップリング曲の歌詞もほぼ完成したんだ。良かったらお前たちに聞いてもらいたい」

真斗が思い出したように顔を上げて言うと、香と春歌は「本当!?」と嬉しそうに笑った。
みんなも「そうだった」と言って立ち上がり、2人に曲を弾いて欲しいとお願いした。
じゃあ、と言って香と春歌はキーボードの前に立って2人で弾き始めた。
初めて歌になる瞬間は、特別感動的な瞬間で香も春歌も嬉しそうに笑って聞いていた。
予想通り素晴らしいと思う部分と予想以上に素敵な部分があって、歌が終わると大満足で拍手を贈った。

「すごいです!」
「すっごく素敵!」
「本当!?良かったぁ」
「歌詞見せてください」
「…あ〜…この、ここ、すごく良かった!那月くんとレンくんの声の混ざるところも良かったし」
「うんうん!ここのAクラSクラで分かれてるとこもすごく合ってたよね」
「どうしよ、もっかい聴きたい…!」

2人が喜んでるのをみんな嬉しそうに見守っていたが「ここ、少し歌いにくそうでしたね」とトキヤが真斗に声をかけた。
そこから曲と歌詞の微調整が始まると夢中になってしまい、レッスンの先生が来たことにも気づかずに話し合いを続けてしまった。

「ほらほら、始めるよ〜」

先生がそう言うと、みんな驚いて慌てて片付けた。

「ごめんなさい。夢中になってしまって」

香が謝ると先生は新曲見せて、と言って香から歌詞の書かれた楽譜を受け取った。

「これで完成?」
「今、ちょっと微調整中ってところです。歌いにくそうなところがあって」
「じゃあ今日からこれでレッスンしてこ。あなたたちも一緒にここで微調整してって、完成させちゃおうよ」
「いいんですか?」
「いいよ。社長からやり方は全部任されてるし。それに歌いにくいからって直す必要があるとことないとこがあると思うから、そこも考えてこ」

レッスンの先生は香たちにも指導をしてくれて、ありがたくその提案に乗らせてもらった。
その甲斐あって、これで本当に完成と言えるところまで進めることができた。

「じゃあ30分休憩したら続きね。はいかいさーん」

休憩になると、那月は香を呼び止めた。

「かおりちゃん」
「那月くん、お疲れ様」
「かおりちゃんもお疲れ様でした。あの、今日、少し時間取れる?」
「今日?うん、大丈夫だよ。あとは編曲だけだし」
「良かった。じゃあ、えっと…また連絡します」
「うん。待ってる。…じゃあ、私編曲してくるから、頑張ってね」

香は待たせている春歌をちらっと見てから、那月に小さく手を振った。
那月も「かおりちゃんも頑張って」と言って手を振り見送ると、水を飲んで大きく深呼吸をした。
今日こそ、ちゃんと話そう、と思うだけで胸がドキドキして、少し浮ついた気持ちになってしまった。
香も、少し期待するような気持ちで顔がにやけそうになるのを堪えながらオーディオルームへと向かった。
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