桜咲く

□あいうえお・恋のお題7
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 桜生さんという名の恋人と縁が深く繋がっている今では、私にとってなくてはならない存在になった。
 彼にとっても、そんな存在だったらいいのにな。

 梅雨に入り、毎日しとしと雨が降っていた。
 私は仕事に区切りをつけて、窓外を見つめる。

「桜生さんとデートしたいな……」

 そう呟きつつ、彼も今は仕事中だし、梅雨時だから出掛けるのは難しいだろうと断念する。
 すると──。

「桜ちゃん入るよ」

 突然、桜生さんが部屋に入ってきた。

「桜生さん、どうしたの?」

「今から映画に行かない?」

「え、今から?」

 窓の外は少し雨足が強くなっている。

「うん。外は雨だけど、どうしても観たい作品があるんだ。お願い、付き合って?」

「そうだね。いいよ、行こっか?」

「ありがとう♪」

 そして、桜生さんが運転する軽は映画館へと道を走った。
 目的地に無事到着。
 今日は運良くカップル割でしかもカップルシートが取れた。
 座席はソファーになっていて、ふかふかでとても座り心地がいい。
 私達は恋人繋ぎをして、映画鑑賞に浸る。
 桜生さんが観たがっていたのは、洋画物で両親を亡くした男の子が、音楽に目覚めて旅に出る話だ。
 様々な出逢いと別れを繰り返して成長を遂げ、やがて独りの女の子と恋に落ちて最後には結ばれる感動物語だった。
 思わず泣いてしまうと、桜生さんは手に少し力を入れて、まるで大丈夫と言ってくれているように感じた。
 総じて面白い作品だったと思う。私もすっかり感化されてしまった。
 ──帰り道。

「僕ね、主人公の男の子が自分と重なったんだ。だから、あの子が女の子と結ばれて良かったと思ってるよ」

「うん、分かるよ。最後はジーンとしたもん。しばらく席から立てなかったしね」

「余韻に浸ってたもんね、桜ちゃん」

「素敵な映画に誘ってくれてありがとう、桜生さん」

 私は彼に向けて微笑んだ。

「どういたしまして、喜んでもらえて僕も嬉しいよ」

 桜生さんは口角を上げて言った。

「桜生さんとのデートは何度もしてるけど、私毎回楽しんでるから全然飽きないんだ」

「僕もだよ。桜ちゃんとの時間は何より大切だからね。飽きるなんて論外だな。僕にとって桜ちゃんは唯一無二だからね」

 しみじみ語ってくれる桜生さんはいつも優しくて頼もしくて、あったかい人柄だと思う。
 この先も彼を大事にしようと想った。


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