桜咲く

□あいうえお・恋のお題12
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 爪が伸びてきたから、リビングのソファーに腰かけて爪を切っていた時だ。
 リビングに入ってきた桜生さんが私に歩み寄る。

「桜ちゃん爪切り?」

「うん、伸びてきちゃったから」

「僕も手伝うよ」

「?」

 桜生さんは隣に座り、私の腰を引き寄せて、脚の間に座らせた。
 背後から抱き締められて「貸して?」と爪切りを奪われる。

「自分でできるのに」

「いいの、桜ちゃんのお世話は僕のライフワークだからね」

 それが幸せなんだよと笑うから、こっちまでそれが伝染する。
 そんな彼は、私の指に手を添えて爪を切り出した。
 彼は手先が器用だから、両手とも丁寧に爪を切ってくれた。そして、仕上げに優しくヤスリをかけてくれる。

「わあ、上手!」

「爪切りには少し自信があるんだ。それに桜ちゃんの可愛いお手々に映えるように爪を切らないとね」

 白魚のように綺麗だからと、優しく撫でられた。
 少し気恥ずかしくなって肩を竦める。

「どうしたの?」

「恥ずかしいの……」

「ん?」

「桜生さんが褒めてくれるから……」

 可愛いなとウエストに腕が回された。

「俺の桜ちゃんは恥ずかしがり屋さんだもんね?」

 項にキスを落とされ、肩が小さく震えた。
 エアコンが効いた部屋は少し寒いくらいで、私は桜生さんに身を委ねて温まる。

「桜生さん、もっとして?」

「姫の仰せの通りに」

 今度は項に唇を這わされて、ゆっくり愛撫される。

「桜ちゃん、すっかり甘え上手になったね。僕、嬉しいよ」

 項に軽く歯を立てられて、躰がぴくりと反応し、それを労るようにペロリと嘗めなれ、鼻に抜けるような声が漏れた。

「ホントに可愛いな。桜ちゃんの喘ぎ声好きだよ」

「……意地悪」

「でも、そんな僕も好きでしょ?」

「……うん」

「僕もしおらしい桜ちゃんが大好きだよ」

「っ……」

 ウエストに回っていた手が、いつの間にか胸の膨らみに添えられて、やおら揉みしだく桜生さん。
 気持ちよくて、少しずつ息が乱れていく。

「桜ちゃん、今日もじっくり楽しもうね」

 二人だけの濃密な行為は、心身ともに癒される大切なひとときだ。
 私は桜生さんに身を委ねたまま、甘いムードに浸り、彼が与えてくれる快楽に溺れていった。


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