Guardian-守護者-
□第三話
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叩かれた頬に手を当てて、視線を地面に落とした。実さんに、こんなに怒られたのは久しぶりだった。
「…はぁ、お前が任務以外の戦闘を嫌がっているのは分かってる。でも俺達は何のためにココにいるんだ?」
「………」
俺の肩に手を置いて、顔を覗き込む様にして目線を合わせる。実さんの、先程までの凄まじい怒気は消えていた。
「何の為―――守る為だろ?そう、それこそが俺達の最大の使命だ。アキ、いい加減腹を括れ。いつまでもこんな事はしていられない…分かってるだろう?」
「………」
分かってる…頭の奥では。でも分かってるだけじゃダメなんだッ………。
「アキ、今ココで死んだらアノ人達にどやされるぞ?何より、あの人達はお前が無残に散る事を望まない」
「………」
叩かれた頬を押さえながら静かに目を閉じた。
何やってるんだ、俺。子どもみたいに戦いは嫌だと駄々を捏ねて…。
そうだね、とっくに答えは出てる。
「……これは意味のない戦いじゃない。ココを、この世界を守るという絶対の理由が――戦う理由がある」
アキがそっと小さな――でも凛とした響きを持つ声で――そう告げた。
閉じた目をそっと開くとそこには俺達が知っている氷帝学園の空風 アキではなく、守護者としてのアキがいた。
「アキ……」
「…敵は15匹、二人じゃ割り切れないねぇ?」
ふッと先程までの弱々しい表情とは違い、相手を焚き付けるような微笑を浮かべながらアキが実に話しかけた。
「…じゃあ先に7匹倒した方が最後のヤツを殺るってのはどうだ?」
「さぁ〜んせーぃ『蒼牙ッ』」
アキの胸元で輝くペンダントが一瞬激しく光り、剣へと姿を変えた。
背中合わせになり個々に武器を構える。
「さてアキさん」
「何でしょうか実さん」
「コイツら…魔狼を倒すのに最適な術は何でしょうか?」
「愚問だね。こいつらの系統は炎。すなわち水系と氷系だぁ!!“大気に存する水よ、我が手に集いて氷を纏え”…『氷雨ッ』」
手に水の塊が出来、ピシッと音を立てて凍っていった。