詰め込み式

□暗闇で、人を呼ぶ
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暗闇で、人を呼ぶ






「ギンコ」


暗闇の中私は彼を呼んだ。
ギンコは、それに反応したのかはわからないがもぞりと音がする。
それがまるで虫のようで、笑いが込み上げてきた。


「ギンコ」


再び呼んで、返事が来ないことを理解する。
相当深い眠りに入っているようだ。
眼を細めて、その様子を見る。

周りは真っ暗で、月も星も雲に隠れていた。
獣を避けるために燃やしていた薪も、すでに消えている。
辛うじて燻ってはいても、辺りを照らす光りにはならない。


真っ暗。
深い闇。

それでも目を凝らせる。

私は知っている。
この闇は闇ではない。
私の中に住む蟲にとっては、暗闇など、意味を成さない。


「おい」


じっとして血の中の蟲を呼んでいると、突然ギンコが起き出した。
あんなに深く眠っていたのに。

ごそごそと辺りをあさって、何かに明かりを灯す。


「ま、ぶしいよギンコ」

「蟲が騒いでるだろ」


手で目を覆って文句を言ってみせれば、彼は眠そうに欠伸をかみしめて、側へとやってきた。
そうして今度は箱から瓶を出して、小さな皿に粒を出す。


「ほら、飲め」

「いらないよ」

「蟲が騒いでるだろ」

「騒いでないよ」

「嘘だな。なら」


どうして体が光る?
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