詰め込み式

□拾われたソロモン
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誰かが僕を揺する。

何と問おうとするも、口が動かない。
声が出ない。
体が、動かない。





拾われたソロモン




「お兄さん、死んでる?」


女の子の声に、動かない体を叱咤する。
するとまた揺すられ、ごろりと体が仰向けにされた。


「うわ、ヒドい怪我。やっぱり死んじゃったかな」


軽くつつかれた気がする。
それが幼い子供がしていることのようで、ふと微笑んだ。

すると驚いたように息を飲む音。次に布を破るような音。
何を、やっているのだろう。
今度は体を起こされた。


「お兄さん、死んじゃダメだよ」


締め付けられる上半身。
どうやら布か何かで縛られたようだ。

どうして、と腕をあげようとするも、左の感覚がない。
はっとして無理やり瞼を開ければ、そこは見慣れぬ場所だった。


「ここ、は……」

「動いちゃダメ。大怪我してるんだから」


起こされた体を動かそうと試みると、それを察したのか女の子のものらしき腕が僕の肩を押した。
抵抗もできずに再び地面へ横たわる。

血が、足りないのだ。


「……君は……?」


まだ視界もはっきりしない。
しかし近くに女の子がいるのだけは確かだ。
一体誰なのだろう。
どうしてここにいるのだろう。

僕は小夜の血で、死んだはず。
最後に見たのはアンシェル兄さんの姿だった。


「私の名前?それよりそっちが名乗ってよ。家の前で血だらけで倒れて……ちょっと、聞いてる?」


不機嫌そうな声色。
すると女の子の気配が遠ざかるのがわかった。
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