詰め込み式
□押し花
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押し花
じっと小さな道の脇にある草むらに彼女はいた。
その顔には一見子供の落書きを書いたようなお面が張付けてあって、表情は見えない。
人間が通っても特に興味はないらしく、ただぼんやりと空を見ている妖だった。
しかし最近彼女は何かに熱心になっているようだ。
いつも見上げている空を見もせずに、手元で何かを作っている。
「こんにちは」
「……夏目、くん」
夏目はそんな彼女にそっと声を掛けた。
彼を包むふわりと優しい雰囲気に、妖は慌てて下げていた視線を上げる。
「夏目くん、夏目くん、見て、お花」
いつの間に摘んでいたのだろうか。
彼女の脇には数本の花の束がある。
それをそっと差し出した。
夏目はそれを微笑んで受け取って、代わりに何かを渡そうと言うのか鞄を開ける。
「ほら見て押し花」
出て来たのは一枚の栞。
それは白い紙の中央に押し花を飾るという簡素なものだったけれど、妖はそれを気に入ったようだった。
「とても可愛い」
「うん、君が可愛い花をくれたからね」
夏目はそう言うと彼女の手に栞を置いた。
「……これ」
「これは君の。二枚作ったから」
確かに彼の手には同じような押し花の栞。
おそろいだと笑う夏目に彼女は照れたように俯く。
見れば、首まで赤い。
夏目はそれが少し嬉しくて、また貰った花で、何か作ってやろうと思った。
ある日の夏目と妖