詰め込み式

□暗闇で、人を呼ぶ
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まるで地面の下の川みたいに、じんわりと、私の体の中の血が。
薄黄緑色に、肌の下の血管が発光している。
とても、不気味。


「暗いのが嫌なら明かりぐらい付けろよ」

「はい……」


押しつけられた皿を取って小さい返事をした。
ギンコはそれに満足したようで、薪に再び火を付ける。


「……ギンコ」

「ん?」

「薬飲むから、一緒に寝てもいい?」

「…………飲め」


沈黙に、否定されたような気分へと落とされた。
渋々と私は粒を口に入れ、差し出された水で喉に押し込む。

嫌だなぁ。
血管に住む、蟲が騒ぐ。


「ごちそうさま」


ぱちぱちと燃える薪。
火の粉が空へと舞う。

それをぼんやり見ていると、ほら、と腕を引かれた。


「な、に」

「寝るんだろ」


あっさりと言ったギンコに、今度は私が驚く番だった。
ぽかんと口を開けていると、じろりと睨まれる。


「ほら、寝るのか、寝ないのか」

「ね、寝るよ!寝るから待って」


そうやってやりとりをしている間に、光っていた血管がすっと光りを失っていく。
それが少し寂しくて、また懲りずに心の中で呼び掛けようとする。
けれど、そう思ったのは一瞬だけ。


次に考えたのは、隣りに寝るギンコをどう意識せずに寝るか、だった。





Fin...







血の中に蟲を住まわせる女の子
蟲は害を及ぼすものではなく、できるだけ宿主を守ろうとする


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