神話の片鱗となりてα

□神話の片鱗となりて−肆
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 目を開けると、見慣れない石造りの天井が目に入って来た。
 一瞬、自分がどこにいるのかと戸惑い、慌てて体を起こす。

「そっか……ここギリシアだっけ」

 寝ぼけまなこをごしごしと擦り、大きな欠伸をした里玖は、やっと自分が置かれている状況に思い至ったのだった。

 昨晩白羊宮に着いた里玖は、食事を摂り、風呂に入るとすぐに眠ってしまった。
 自覚はなかったが、やはり疲れていたようである。

「教皇の間に行く準備をしなきゃ」

 今日は、サガが聖域にいる黄金聖闘士に召集をかけ、改めて里玖の紹介をする事になっていた。
 昨日の段階でアイオリア以外とは言葉を交わしていたが、やはり公式な場に招かれるとあって緊張しているようだ。

「里玖、まずは顔を洗ってらっしゃい」

 神無に促され、里玖は洗面台に行き顔を洗う。
 冷たい水が里玖の脳を覚醒させた。

 それから着替えを済まし、髪を整えて里玖は寝室を出た。

「おはようございます、里玖。良く眠れましたか?」
「おはようございます、ムウ。とても良く眠っていたみたいで、一瞬ここがどこだか分からなかったくらいです」

 ムウと朝の挨拶を交わす里玖だが、昨日とは明らかに違うムウの姿に気付き、その姿を凝視する。
 里玖の視線の意味が分かったムウは、少し気恥ずかしそうに説明をした。

「私達聖闘士が聖衣を纏って戦う事はご存知ですね?」
「ええ、銀河戦争の時に」

 里玖は銀河戦争のテレビ中継を思い出していた。
 しかしテレビで観たものと、ムウが着ている聖衣は余りにも違いすぎる。

「しかし、それだけではないのです。我々にとって聖衣は、正装でもあります。今日は教皇からの召集ですから、聖衣を着用しているのですよ」
「じゃあ……それがムウの聖衣……?」

 ムウは実に優雅な所作で頷いた。

「黄金聖闘士の纏う聖衣は黄金聖衣と言われています。少々……目に眩しいかも知れませんが」

 金色に輝く聖衣を呆然と見つめ、里玖は「凄い……」と呟いた。

「銀河戦争で戦っていた人達のとは全然違うんですね」
「ねえ、それって金で出来てるの? 溶かして売ったら……いくらくらいになるのかしら」

 大真面目な神無の台詞に、里玖は慌て、ムウは苦笑した。
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