Comply with a riquest
□デルタアタック!
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「ロッド、飲みに行くぞ。付き合え」
「ごめ〜ん。今夜はGと約束してるんだ。また明日ね」
夜の10時。
ガンマ団特戦隊飛空艦内リビングにて。
これからが活動時間だと言わんばかりに、ロッドもマーカーも昼間より元気になっている。
隊服から派手な私服に着替えたロッドは、ご機嫌なのか鼻唄を刻みながらポケットに携帯と煙草に財布だけを入れて立ち上がった。
同じく私服に着替えているマーカーの前をすり抜けようとした時、急に腕を引かれてソファに無理矢理座らされてしまった。
「あたた…」
バランスを崩して自分の足を蹴ってしまったようだ。
片足を上げてプラプラさせる。
「…貴様、私の誘いに乗らないというのか?」
「え?だって今日はGと約束してあるし…明日でもいいじゃん?」
「ほぅ…」
普段、自分のことを追い掛け回すヤツが先約があるから、と笑顔で出かけようとしている。
タイミングなのか。
気分屋なのか。
どちらにしろ理不尽な思いを抱えてしまったマーカーが、うっすらと額に青筋を立ててロッドの正面に立ち、開いていた膝の間に体を割り込ませ、背もたれに手を着いてロッドの動きを封じた。
「ま、マーカーちゃん?」
「私を拒むとは…いい度胸だな」
「こ、拒むって、明日もどうせ暇なんだから明日でいいでしょ、って言っただけじゃん!」
端正な顔が冷たくなっていくのに脅えを見せるロッド。
逃れようにも、特に押さえ付けられているわけではないのに、ソファから立てなくなっていた。
「…いつもは断っている貴様からのクドイ誘いを今日は快く受けてやろうとしていたのに…そうやって足で踏みにじるのだな?」
「そんな勝手な!いつも断るマーカーが悪いんでしょ!オレにだって予定くらいあるよ!」
牙を剥いて反撃してきたロッドに、目を細めて一層冷たい光を放った。
「わかった。二度と貴様とは飲まない。どこへも行かない。触れもしない」
すっと身を翻してリビングから出ようとする。
「ま、待ってよ!」
追い縋って腕を掴んだ。
「じゃあさ、こうしよ?3人で飲みに行こう?せっかくマーカーが誘ってくれたんだし、仲良く飲もうよ」
マーカーの怒った顔を覗きこむように話しかける。
ロッド的には好きな二人と一緒に出かけられるなら、何でもよかった。
Gとの約束だってなんとなく決まっただけだったし、Gも別に何も言わないだろう。
本当はロッドを巡って何度か小競り合いをしているのだが、二人がロッドに知られないよう密かに争っていたのだった。
確にロッドは、この二人が別段仲良くしているわけではないが、仲が悪い風にも思っていない。
水面下の戦いに気付かないロッドは、“みんな一緒”を望んでいる。
マーカーは瞬時に頭で計画を練り、少しの間を空けてから口を開いた。
「…そうだな。たまには3人というのも悪くない。行くぞ」
「あ、待って!」
気まぐれな態度を示してマーカーがリビングのドアを開けて出ていった。そのあとを慌て追うロッド。
廊下を歩いていると、前方のドアが一つ開いた。
出てきたのはGだった。
「…用意できたのか」
「あ、あぁ」
ふと、ロッドの後ろに立つマーカーと目が合う。
「今夜は私も混ぜてもらうことになった。飯の美味いところを選べよ」
不遜な態度で告げるマーカーに「そうか」とだけ言ってロッドを見た。
久しぶりに二人で飲めると思っていたのに、些か肩を落とすG。
その様子に気付いたマーカーが、口端だけをくっと上げて笑う。
ロッドの肩越しに、小さな火花が散った。
「じゃあ、行こ。オレちょうど腹減ってきたし。この町は海鮮が美味いんだって」
二人の様子に気付かないロッドは、ただ二人が一緒にいることに喜びながら、出口へと進んでいった。
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