Comply with a riquest

□patience?endurance?
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エレベーターがくるのをおしゃべりしながら待っていた。

チン、という音とともに扉が開くと、そこには今一番会いたくなくて、一番会いたい人がいた。


「あ…」


しっかりとリボンタイを締め、隊服をきっちり着こなした隊長は、艦でもあまりみないほど小綺麗になっており、久々に見た姿にオレは不覚にも涙が出そうになった。

そんな隊長は、少しやつれた顔でオレを見るなり驚いたような表情をして、隣にロッドがいるのを認めるとすぐにしかめ面に変わった。


「隊長、お疲れさまで〜す」


ロッドに押される形でエレベーターに乗りこんだ。
下降するエレベーターの中、オレは気まずい気持になって、階数表示を見上げた。


「あ、仕事片付いたんですか?」

「……どこ行くんだ」


ロッドの質問には答えず、オレを背中から射るように声を投げられた。


「…街へお茶しに」

「…へぇ。ロッドと二人でか」


心なしか、言葉に棘があるような。

それを打ち消すようにロッドが明るい声で言った。


「車で一時間くらいのとこに新しくメイド喫茶ができたんですよ。可愛い子が多いって聞いたんでたまには健全なお店にも行こうと思いまして」

「はぁ?!何それ、オレ聞いてないし!」

「言ってないもん。言ったらお前嫌がるじゃん」

「あ、当たり前だろ!ロッドが誘いにきた時点で怪しむべきだったぜ!」

「でもその店スイーツが美味いってのも有名なんだよ。スペシャルベリーベリーパフェとか、スィートキャラメルパンプティングとかあってさ。リキッドなら喜ぶと思ったのにな〜。まぁ行きたくないなら無理に誘わないけど?」

「…別に、ちょうど小腹が空いてきたとこだし?どーしてもっつーなら行ってやってもいいけど?」

「じゃあ行こ♪」


ロッドとのやりとりを、腕組みしながら壁に寄りかかって見ている隊長の視線が痛い。
この箱の中の空気が息苦しく感じ、早く着かないかと焦れて階数表示をチラ見した。



隊長が途中の階で降りるまで誰も乗り降りすることはなく、隊長が降りる際も無表情のまま行ってしまった。
ロッドは気付いているのかいないのか、いつもの明るい調子でエレベーターの扉が閉まるまで隊長を見送った。


「…隊長と何かあったの?」


二人きりになってロッドが聞いてきた。


「別に…何もない」

「そんな顔しないでさ、お兄さんと美味しいもん食べて元気出そうよ。可愛いお姉ちゃんもいることだし♪」


ロッドの明るさが、今のオレの気持を軽くさせていた。




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