Comply with a riquest

□Holiday
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陽も大分傾き、部屋の中がオレンジ色に染まっていく。


「そろそろ夕飯だなぁ。腹減ったか?」


未だ枕に伏しているリキッドに声をかけるが返事がなかった。
寝たのかと反対側を向いている顔を覗き込むと、目は開かれていて壁をぼんやりと見つめていた。


「どうした」

「……部屋ん中、真っ赤だ」

「あぁ。どうせなら」


部屋着のシルクで出来たローブを肩にはおってベッドを降りると、少し離れた窓際に近付きカーテンを開けた。


「こっち来いよ。いい夕焼けだぜ」


その声に首を巡らし、重たそうな体を起こしてパイル地のローブをはおってベッドを降りた。

ペタペタと足を鳴らしながら外を眺めるハーレムへ近寄る。

シルクのローブが赤い夕日に照らされて光沢を放ち、そよ風になびく髪は黄金色に輝いている。
前の合わせ目から覗く胸板や裾から伸びる足、外を眺める横顔。


「キレイ……」


思わず見惚れてこぼれた言葉に慌てて口をつぐむ。そんなリキッドに気付いてか否か、手招きをして外を指す。


「見てみろよ。空も海も真っ赤っかだ」

「すげ…」


夕日の煌めきが水面に反射し、辺り一面が夕焼けに染められた。
遠くの砂浜に打ち寄せる波のさざめきが心地好く聞え、コテージ下ではチャプチャプと水の踊る音が聞こえる。


そんな中でハーレムはリキッドの、リキッドはハーレムの呼吸音だけを感じていた。






引かれるようにお互い顔を見合わせる。


「リキッド…」


背中から抱き寄せ、リキッドの頭に顔を埋めた。


「隊長…」


背中から伝わるハーレムの体温に心拍数が上がる。
心なしかハーレムも心拍数が上がっている気がした。









まるで、世界には二人きかいないような錯覚を同時に覚えた。









ふと、腰の上に硬いものが当たっていることに気付いたリキッドが、恐る恐る振り返った。


「隊長…?」

「はは。お前と引っ付いてたら勃っちまった」


ほら、とばかりに押し付けてくるハーレムから逃れようとしたが、胸の前でしっかり腕を組まれてしまい、身動きが出来なくなった。


「隊長っ、オレ腹減ったよ!」

「じゃあ食前の運動でもすっか」

「腹が減ってそんな元気ない!」

「平気平気。すぐ済ますから」


暴れていたリキッドがピタリと止まった。


「すぐって……そんなただの処理みたいな…」


ハーレムの言い方に些か傷付いた様子のリキッド。
うつ向いてしまった項を見下ろし、どうしたものかと頬を掻いた。


「…悪かったよ」


言いながらリキッドの体を反転させて正面から抱き締める。
黙ったままのリキッドの耳に、擦れた声で囁いた。


「リキッド…たっぷり愛してやるから…」

「っ、っ隊長」


ピクンと体を震わせ、崩れそうになりながらハーレムにしがみついた。

どうやら声だけで腰が抜けてしまったようだ。




「…いいか?」


熱い吐息で耳に吹き込めば、ただ頷くしかない。


おずおずと広い背中に手を回して抱きついた。

正面に覗く胸板に頬を寄せ擦りつく。よくかぎ馴れたハーレムのトワレが鼻をくすぐり、自然と体が熱くなった。


「リキッド…」


顎をすくい上げるとブルーの瞳が熱に潤み、誘うように唇が開かれた。


「隊長…」




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