Comply with a riquest

□American Dog
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それは突然の事だった。




いつものように本部滞在中。

いつものように兄貴の元へ報告兼お小言を聞きに行って、本部内の部屋へ帰ってきただけ。


部屋にはリキッドが待っていて、飯を一緒に食べたら寝るまでタップリ運動しようと思っていた。

疲れていたし、何だかんだ久々なので無理矢理3日間の休暇までもらった。

これで心おきなくリキッドと過ごせる。




そう思っていたのだが。









部屋に戻った時、リキッドの姿はなかった。


俺が戻るまで外へ出るなと釘を刺していたんだ。
言いつけを破るほどケンカもしていないし、待ってると言って見送ってくれた。


だとすると、誰かの部屋に行ったのか、俺を迎えに行こうとして行き違いになったか。


とにかく携帯を鳴らしてみることにした。



すると、間の抜けたアイツの着信音とバイブレーターが微かに耳をかすめた。

忘れていったのかと部屋の中を見渡して音のする方へ近付いていく。



奥の寝室を開けて段々大きくなる音を辿って行くと、ベッドの上にリキッドのものと思われる隊服が脱ぎ散らかされていた。

またその脇にシーツの塊があることに気付く。




リキッドがいじけている時にとる行動だ。


俺のいない間に何かあったのだろうか。





「リキッド」


少し心配しながら声をかけてみたが、塊がビクリと震えただけで出てこようとしない。

面倒になった俺はそのシーツを勢いよく剥がしてみた。


「何くるまってんだよっ…………………………………」


剥がしたポーズのまま、しばらく固まってしまった。


「…た…たいちょぉ……」


泣きそうにあげる声は、確かにリキッドのもので。

間違いなくリキッドだけれども、頭に生えた三角のモノや、背中の辺りから微妙に見えているふさふさの箒のような毛の棒が、一瞬思考回路を止めさせた。

そして、何故素っ裸なんだ、と疑問を持つよりも頭の上のものに目が釘付けになる。








すぐに冷静になって思ったことは、またロッドたちにからかわれて無理矢理つけられた、イジメ案。

もしくは、リキッドが新しい趣向に目覚めて出迎えただけだった、コスプレ案。



あるとするなら前者のイジメ案だろう。
裸に剥かれて泣き顔をしているところからそう考えるのが一番自然だ。







「…誰にやられたんだ?つかやられてんじゃねぇよ。…ったく」


蹲ったままのリキッドの頭に生える犬の耳と思われるそれを取ろうと引っ張った。



が。






「っい、痛い…です」


耳を上に引っ張るのと一緒にリキッドの頭が着いてきてしまう。


どうやってくっついてんだろうと考えるより先に、手に伝わる生暖かい感触に驚いてそこから手を離した。


「…あの……これ…飾りとかじゃないんです…」


乱暴に扱ったせいか痛がって耳を摩っている。

何の冗談だと言ってやりたがったが、涙目で見上げてくるこいつは嘘をついていないことは分かる。


そもそも俺に嘘が言えるほど度胸のあるヤツではない。


では、なぜこんなことになっているのか。





とりあえず、コイツから聞くしかない。


脇に手を差し入れて抱き上げると、シーツに隠れていた尻尾が露になった。
くるんと丸まったふさふさのそれは、日本の犬、柴犬のによく似ている。

ベッドに座らせシーツでくるんでやり、目線を合わすようにしゃがんだがこいつはこっちを見ようとしない。

何かに怯えているのか、耳も尻尾も伏せたまま。
目はあちこちに泳いでいる。



これは、犬が主人に内緒で悪さをした時に見せる仕草だったりする。






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