Comply with a riquest

□American Dog
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「……何をしたんだ?」


出来るだけビビらせないように優しく聞いた。

しかし、こいつはこんな気遣いをする俺に対し、言い辛そうに口をつぐんでいるだけ。


あまり忍耐力のない俺をそうやって焦らせるのは、まったくこいつだけだ。


どうしたものかと、部屋を見渡した時、ふとテーブルの上に見慣れぬ箱を見付けた。


立ち上がってテーブルの前へ行く。


「このチョコ…」


箱を見れば、あまり甘いものを食べない俺が唯一酒のつまみに食っている某高級洋菓子店のチョコレートだった。

箱の回りには食い散らかしたように包み紙が何枚か散らばっている。


俺が出掛ける前にはなかったものだ。


世界でも有名なショコラティエが作ったチョコレートを、リキッドが自分で買えるものでもない。


「こんなもんどっから拾ってきたんだ」


箱を指しながら振り返ると、今にも泣き出しそうなほど顔を歪ませたリキッドがいた。


「…おい?」

「ご…ごめんなさぁい」


途端に涙を溢したリキッドに驚いて近付いた。


「それ……隊長のなのに…ひっく……勝手に食べちゃったんです…っ」

「俺の?どういうことだ」

「隊長が帰ってくるのを待ってた時……隊長にって持ってきたんだけど……すげぇ美味いチョコレートだって聞いたから…我慢できなくて」


嗚咽混じりに吐かれた言葉に半分納得はしたが、半分謎が残った。




俺のだというチョコレートを勝手に食べてしまったから、怒られるのを恐れていた。


ここまでは分かる。



しかし、チョコレートを食べたことと、リキッドの変身に繋がりはあるのか。





そして、ふと閃いたのは、誰がこれを持ってきたのか。






もう一度箱を開けて中身を一つ抓み、半分に割って中身をかいでみてから舌で少量舐めてみた。


「……なぁ、誰が俺宛てにこれを持ってきやがったんだ?」


極々僅かに舌先で感じた刺激に、とある人物が脳裏をよぎった。


「……髪の毛が黒くて長い……垂れ目で…泣きぼくろのある男の人……」






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