Complacency 2
□ずっとずっと一緒にいようね!【中編】
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「…よぅ。最近あいつの様子がおかしいんだけど何でだと思う?」
「知りませんよそんなもの」
ある日の昼休み。
会社の屋上で煙草を吹かすハーレムさんの横には、垂れた目に泣きぼくろが印象的な男性、高松さんが同じく煙草を吹かして柵にもたれていました。
ハーレムさんとは学生時代から一緒の竹馬の友であり、仕事の上では一、二を争う良きライバルです。
課が違うためあまり休憩がかぶりませんが、時々時間が合えばこうして煙草に誘ったり、昼飯を一緒に食べたりしていました。
この数日間、リキッドさんの様子がおかしいことにやっと気付いたハーレムさんですが、原因解明にまでは至ってませんでした。
朝から妙にソワソワと浮かれて落ち着かない様子だったり、今までよりもお見送りが元気になっている気がして仕方ありませ。
まるで早く出ていけと言わんばかりに…。
どうしたものかと悩んでいた矢先、親友である高松さんに会ったのです。
しかし、相談してみるものの、他人のことに関心をもたない性格なため聞いてくれませんでした。
「冷てぇなー。ちょっとくらい励ましてくれてもいいじゃねぇか」
「お宅の痴話喧嘩なんて聞き飽きました。どうせすぐに仲直りする程度のものでしょう?」
「それがよぅ、なーんか嫌な予感がするんだよなぁ」
「嫌な予感ねぇ…。例えば……旦那の居ぬ間に浮気とか」
「ゲフッ!」
煙草の煙にむせて大きく咳き込むハーレムさんに、「例えばの話ですよ」と何でもないかのように煙を吐きだしました。
「さて、私は戻りますよ」
「もう行くのかよ。なぁ、今晩飲みに行かねぇか?」
「またの機会にしてください。……あぁ、一つだけアドバイスしてあげます」
屋上の扉を開けて振り返りました。
「女性は何かと特別な日を作りたがるものです。その印が付けられていた日をよぉく思い出してみてください」
閉まる扉を見て、再び柵に肘をつくハーレムさん。
「…さっぱり思い付かねぇ…。直接聞いた方が早ぇかな…」
最初にカレンダーのことを指摘した時の事を思い出し、なんとなくそれはマズイ気がする、と野生の勘を働かせ自力で思い出そうと決意しました。
夜。
相変わらず忙しいハーレムさんは、11時を過ぎても帰ってきません。
「…遅いなぁ……先に寝てていいってメールはあったけど…」
点けたテレビをぼんやりと眺めながらカレンダーを見ます。
あの印を付けた日まであと10日となっていました。
「…やっぱ忘れてんのかなぁ……」
とてもとても大切な日なのですが、その日が近付いている今も思い出す気配がありません。
それでもハーレムさん自身で思い出して欲しいと願っていました。
「…オレだけの特別な日じゃないんだから」
滲んできた涙を拭い、ソファに転がったまま、気付けば寝てしまいました。
しばらくして帰ってきたハーレムさんは、ソファで寝ているリキッドさんに驚きつつ、優しく抱き上げて寝室へ運びました。
眉間に皺を寄せたリキッドさんの頬をそっと撫で、触れるだけのキスをしました。
ふわ、と香った甘い匂いに疑問符を浮かべ、ますます頭を悩ませています。
「…俺の知らないところで……何をやっているんだ…?」
眉間の皺を伸ばすように撫でていると力が抜けたように安らかな寝顔に戻りました。
その顔を見て自分も早くリキッドさんの隣で寝ようと着替えることにしました。
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