Comply with a riquest

□七夕に願うは
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わさわさ…



鮮やかな緑の幹から伸びる、細長い葉がゆらゆら揺れて、狭い廊下の壁を擦る。


「オラ、帰ったぞ」


艦に戻リビングへ真っ先に向かうと、ロッドとマーカーが昼真から酒を飲んでいた。


「わっ、隊長。どうしたんですかそれ」

「そこのテーブルどけろ」


わさわさ揺らしながら部屋に入ってきた俺に、驚くのを無視して顎でテーブルを指す。
飲んでいた酒瓶やらツマミやらをマーカーがどかし、ロッドがテーブルをリビングの隅にやる。


「よっこいせ、と」


ドス…と重たい植木鉢をその空いたスペースに置く。あまり高くない天井に頭を曲げられ下を向くが、とりあえず枝と葉っぱは無事だ。


「リキッドとGはどうした?」

「部屋にいますので呼んできます」

「おぅ」


返事を返す前にソファを立つマーカー。




つーか、なんでGと二人でいるんだ?

俺が報告に行ってるってのに大人しく一人でまってろっつーの。

ムカつく。















「何すか隊長?……て、なんだこりゃ!?」

「どうだスゲェだろ?」


無口なドイツ人(密かな恋敵)とバカで可愛いひよっ子がリビングに入るなり素頓虚な声をだして驚いた。




うんうん、その顔だよ。その顔が見たかったんだよ。



Gといたことは今は水に流してやろう。ふぅ、少しすっとした。






「今日が何の日か知ってるか?」


集まった部下共の顔を見渡すが不可解な表情をしている。




かっかっか。分かるまい君たちには。




得意げに口を開こうとしたその時、


「あぁ、七夕ですよね」


一番分からなさそうな、いや、分かるはずもないと思っていたリキッドが答えた。


「なぁんでテメェが分かるんだよ」


胸ぐら掴んで持ち上げると、突如顔を変えた俺に、答えられたのに何で怒られるのか抗議する。


「うっせーなー。きゃんきゃん吠えんなよ」


パッと手を離し下ろしてやる。


「で、その七夕がどうしたんですか?」

「てゆーか、このバンブーと関係あんですか?」


マーカーとロッドが竹を見上げて言う。


「おぉ、そうだったそうだった」


上着のポケットから数枚の紙とペンを取り出し、ソファに投げる。


「この短冊て紙に願い事を書いて、これにぶら下げると願いが叶うんだとよ。さっき兄貴に貰ったんだ」


どうだ、とばかりに腕を組み、みんなの顔を見ると一様に胡散臭そうに「へぇ…」とだけ言って目を逸らした。


「やるよなぁ…」


指をベキベキと鳴らしながら睨み付ける。



分かってるよ。
こういうの信じるような歳でもないし、面倒だってことも。けどな…。



「わぁいv久しぶりだな」


一人嬉々として短冊に手をのばすリキッド。ソファを台にして座り込みペンを握る。


「何お願いしようかな〜♪」



ほら。こんなに嬉しそうに目を輝かして願い事を考えている。

お前らはどうでもいいんだよ。

コイツが喜べばな。





「みんなは何お願いすんの?」


可愛らしく首を傾げて、振り返る。
その顔を見て三人が「そうだな…」と短冊を手に取る。





チッ−。現金な奴らだな。

おい、ロッド。
にやにやしながらボーヤのこと見てんじゃねぇ。

マーカー、お前もだよ。
何企んでるか分かんねぇ顔すんなよ。恐ぇって。

G、何で頬染めてんだよ。
実はお前に一番警戒してんだからな。




ったくどいつもこいつも…。






リキッドの側に座ろうとするコイツらを、反対のソファに追いやり大股を開いて隣に座った。



「ねぇ、マーカーちゃんは何お願いすんの?」


竹を挟んでそっちのソファでロッドがマーカーにちょっかいを出す。


「うるさい。貴様こそ何を書いたんだ?」

「オレェ〜?見たい?ちょっとだけだよvはい!」



ぴら



「蛇炎流」

「ぎゃーー!!オレの小さな願い!」


…なにやってんだか。

いつもいつも飽きねぇよな二人とも。




Gは一人で黙想しながらぽつぽつと書き始めている。


ちらり。
横目で必死に短冊に願い事を書くリキッドの手元を覗った。


「わっ!隊長見ないで下さいよ!」


影が被さったのか、覗くオレに気付いて短冊を手で隠した。


「いいじゃねぇか。ぶら下げれば分かっちまうんだからよ」

「やっ、隊長!」


必死に隠そうとしているのを後ろからはがい締めにして奪い取る。


「どれどれ、……給料アップ…」



びり



「うわーん!オレのささやかな願い事!」

「うっせー!もっと他に願うことあんだろ?」

「ぐすん……他に?…んと、じゃあ……オレに、優しくしてください…」


涙で瞳を潤ませて、遠慮がちに上目遣いで告げるリキッド。




計算か?そりゃ。
そんな面されて我慢できるわけねぇだろ。





「…りっちゃ〜ん、俺は今でも充分優しいだろ?これ以上どう優しくすればいいのかなぁ?」


蛇のような舌で頬をくすぐるとビビッて立ち上がる。


「なんだ?誘ってんのか?」


逃げようとする体を無理矢理腕を引いて、バランスを崩したリキッドを抱き上げる。


「ちょ…な、何すんすか!は〜な〜せ〜!」

「おぅオメェら。書けたら竹に吊しておけよ」


肩に乗っけたリキッドが暴れるのを、尻を叩いて黙らせる。


「ごゆっくり〜♪」

「きゃー!たっけてー!」





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