Comply with a riquest 2
□お互い様なんです
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「東南アジアで問題を起こしていたゲリラ共合わせて三軍の殲滅、及びそれに手を貸していた連合国の制圧が完了。後の処理は支部の連中に委任してきたぜ」
「ご苦労だったね」
ガンマ団本部。
謁見室でオレたち特戦隊は任務完遂の報告に来ていた。
敵が何人だったか、戦闘のエリアの広さ、破壊規模、何時間何分何秒かかったかなど、細かな情報が書かれた報告書を見ながらハーレム隊長の報告を聞いているのは、隊長の実兄であるマジック総帥。
今回は何日休みがもらえるのかな、なんてぼんやり考えながら一応形ばかり行儀よくしてつっ立っていた。
「報告は以上。じゃ、俺はこれで」
「待ちなさいハーレム」
帰るぞ、と振り返った隊長の後ろで、大きな椅子に優雅に腰掛けたマジック総帥が、これまた優雅に微笑んで呼び止めた。
「ハーレムはまだ話が残ってるよね?」
「話?なんのことだよ」
「先月の遠征先での破壊物の始末書をまだ受け取ってないけど」
「そ、そうだったか?マーカー、あれどうした」
突然話を振られたマーカーが一瞬困惑したようだったが、すぐに冷静を装って総帥の方を見た。
「申し訳ございません。リビングのテーブルに置き忘れてしまいました。すぐに取って参ります」
「いや、その必要はない。この場で書いてもらうから」
にっこりと、微笑みながらも目だけはマジで、突嗟の嘘もやはり総帥には通じないようだ。
「忙しいんだって!そんなん書いてる暇なんかねぇんだよ」
「部下に嘘を吐かせてまで書きたくないのか。まったく…君たちが不憫で仕方ないよ」
「うるせぇ。余計なお世話だ!」
「リキッドくんとイチャつく暇があるなら十分書けるだろう?」
「ない!リキッドとイチャつく方が大事だ!」
気付けばいつもの兄弟ケンカに発達していて、話の矛先がオレに変わっていた。
まさか隊長が余計なことを言うんじゃないかとヒヤヒヤしながら二人を交互に見る。
「リキッドくんがそれを望んでるとは限らないだろう。むしろ迷惑してるんじゃないのかい?」
「んなこたねぇよ。リキッドは俺のこと大好きだからな」
「へ!?」
みんなの視線が一斉にオレに集まっている。
総帥の笑顔と隊長の睨んでいる顔が恐ろしく怖い。
「リキッドくん、正直に言っていいんだよ?嫌なものは嫌、好きじゃないなら好きじゃない。愚弟のことは気にせず私に言ってごらん」
「は…あの」
「アホなこと言ってんじゃねぇよ!リキッドはなぁ、俺のことが好きなんだっつの!」
「なっ何を」
「今朝だって言ってくれたもんな」
「ちょ、待って」
「へぇ…大方ハーレムが寝惚けてただけじゃない?」
「ちゃんと起きてた!」
「じゃあ何て言われたのか聞かせてよ」
「おう!ハーレム隊長だーいす」
「わーっ!!」
みんなの前でとんでもないことを言いそうになった隊長の口を、体当たりするように無理矢理塞いだ。
「ふごっ!っ、何しやがる!」
「それはこっちのセリフだ!変なこと言うなよ!」
「変なことじゃねぇだろ!朝散々言ってたのはどこのどいつだ!」
瞬間、朝のことを思い出した。
戦闘が終わり、艦に戻ってすぐに隊長の部屋へ連れこまれ、シャワーを浴びる間もなく抱かれた。
体の中に渦巻く冷めない熱をなだめるように、お互い絡まり合い、泥のように眠る。
生と死の狭間で戦ってきた後に、隊長と抱き合えることで生きているという安心感を覚えるのだ。
目覚めた時、隊長の腕の中にいる。
砂埃や硝煙の臭いではなく、隊長の優しいコロンの匂い。
それがひどく落ち着く。
だから、つい、いつもより素直になっちゃうんだけど、やはりそれをみんなに知られるというのは恥ずかししいに決まってる。
それなのに隊長は。
「ふぅ…まぁいいや。おら、帰るぞ」
口を塞いでいた手を取られ、ついでに頭を撫でられた。
なんだか仲良くお手々を繋いでるみたいな状況に、かぁっと顔が熱くなって思わずうつ向いたその視界に、マーカーやロッド、総帥までもがニヤニヤとオレたちを見ている。
きっと、オレが隊長に撫でられて喜んでいるのを笑ってるに違いない。
しよっちゅうケンカばかりしているオレが、頬を染めていることを、指差しているに違いない。
そんなことを勝手に思い込んでしまったオレは、恥ずかしさのあまり…。
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