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□ガンマ病院へようこそ!〜小児科〜
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「あら先生。休憩に行かれたんじゃありませんでした?」
あっちこっちで子供の泣き声がする中、一番奥の診察室の前に立ったときドアがガチャリと空いた。
中から出てきたのは中年くらいのブロンドの看護婦だった。
「…急患だ」
「あらあら、それは大変ね。何かご用意しますか?」
「…いや。すぐ済むから大丈夫だ。ありがとう」
「そうですか?じゃ、隣にいますので何かありましたら呼んでください。ボーヤ、お大事にね」
「ぼ、ぼーやぁ?」
にっこりと、小児科の看護婦らしく子供向けの笑顔と余計な一言を置いて出ていった。
「…ボーヤって言われた」
「あはは。子供には変わりないし〜りっちゃんてばカワイイから♪」
「もうっアニキまで!」
この『G』という先生は、オレたちのやりとりを気にするわけでもなく、壁際にある長い診察台に下ろすと、奥のカーテンへ消えてしまった。
「静かな先生だね」
「うん。子供相手の医者とは思えないな」
手近な丸イスに腰掛けたアニキと、大して広くない部屋の中を見回す。
机の上にはやはり子供の好きなヌイグルミがいっぱい置いてある。
壁に貼られたカレンダーもキャラクターもので、机の上のティッシュカバーもそのキャラクターがくっついていた。
「あ!」
「ん?」
「○ッキーがいる!」
そんなヌイグルミたちの中で、オレの心のヒーローを見つけた。
世界中で愛されてる我らのアイドル、ネズミのキャラクターだ。
「お、これうちにあるやつじゃない?」
「違ぇよ。うちにあるのはピンクだもん。青なんかあったんだ〜」
「なに?もしや限定物とか?」
「うん。ちょっと前の期間限定のだな。つか乱暴に扱うなよ」
「へーへー。まったく可愛いガキんちょだね」
「うるせー」
アニキが手にとって宙に放って遊んでるのを、横から奪い取って大事に抱いた。
ヌイグルミが着ている洋服を丁寧に直してみたり、ほこりのついた頭をキレイにしてみたり。
机に置いてあっちこっちの角度から眺めているうちに、奥のカーテンから先生が戻ってきた。
「…好きなのか?」
「はい!あ…やっぱガキ臭いとか思いますよね…」
「…いや。欲しいならあげよう」
「え!でも…これって限定物じゃないんすか?青いのなんて見たことねぇし」
「………俺の手作りなんだ」
「へ〜手作りかぁ。どうりで見たことないと……………えっ!?」
「マジで!?」
「………あぁ」
治療道具の乗った銀色の台車を押しながら言われ、思わずヌイグルミと先生を見比べた。
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