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□ガンマ病院へようこそ!〜脳外科〜
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小児科に寄り道したお陰でまた道が分からなくなってしまった。


こんなことならG先生に内科までの道のりを聞けばよかった、と思いつつ本日何度目かの案内図を見上げる。


「この廊下の二つ目を曲がって階段上って隣の棟に移って…」

「まっすぐ行ってもいいんじゃね?ほら、ここにも渡り廊下がある」

「ほんとだ…あ、こっからでも行けるのね。行けるのにどうして辿りつけないの?」

「さぁ…とりあえず早く内科に。オレ忘れてたけど風邪引いてんだよね。じゃっかん熱っぽくなってきた…」

「忘れてた!急げ〜!」


アニキに引っ張られて廊下を足早に進んだ。






すれちがう看護婦さんがオレたちを見ている。


男同士で手を繋いでるから、とかいう理由ではないと思う。




アニキはいつだって目立つ。


文句なしにカッコイイしスタイルもいい。

昔モデルもやっていたくらいだ。





ふわふわのブロンドの髪が眩しい。

人懐っこい笑顔も警戒心を与えることなすぐに馴染める特質の一つだろう。



そんなアニキに微笑まれたら誰も彼もが見惚れてしまう。


無愛想だったG先生も顔を赤らめて会話してたくらいだ。







時々羨ましいと思ってしまう。


そうやって誰にでも好かれるアニキが。


そして時々妙なことに巻き込まれたりもする。












「あり、入院病棟にきちゃった?」


病室が並ぶ廊下でピタリと足を止める。


「はぁ?!どうしてだよ。つかここどこだよ」

「ん〜…わかんない♪」


辺りをキョロキョロ見回して、きゃぴ、とか効果音がしそうなくらい可愛く小首を傾げるアニキに、通りすがりの看護婦さんと患者さんが「キャー」と黄色い歓声を上げた。


その気持ちもよく分かる。




無意識に甘えて相手を惹き付けるのは、アニキのオハコ。

まぁホストだし?

オレが言うのも難だけどまったく天職だよ。






困ったように眉根を寄せ、人差し指を口に当てて一番側にいた看護婦さんに話しかけた。


「あ、ねぇ看護婦さん。オレたち内科に行きたいんだけど行き方教えて?」

「はい!あの」

「私が案内します!」

「ちょっとアンタこれから検診でしょ!」

「あなたこそ305号室呼ばれてたじゃない!早く行きなさいよ!」



まぁ、ときどーきはこんなこともあったりするのは正直ウザかったり…。



看護婦さんたちの争いに、回りの病室から患者さんたちたちが「芸能人でもきてるのか?」と顔を覗かせて段々とうるさくなってきた。


町中ならいざ知らず、如何せんここは病院だ。






「…アニキ、今のうちにずらかろう…」

「てへへ。そうしよっか」


これまた可愛い仕草で体を縮こませ、こっそりと立ち去ろうとした。

がしかし。







「何の騒ぎだ」


背中に鋭い声が響いた。


するとギャーギャー煩かった空気がピタリと止んだ。


振り向くとそこには一人の医者…?が立っていた。




「わぁお。アジアンビューティー」


アニキの感嘆にオレも頷く。



「君たち、仕事はどうした。私の目の届くところで堂々とさぼりとは…分かっているだろうな」

「マーカー先生!す、すみませ〜ん」


パタパタと足を鳴らして散っていく看護婦さんたちを腕組みして見送ると、今度はオレたちの方へ目を向けてきた。






黒く濡れたような艶をもつ髪に、鋭くつり上がった目は全てを見透かす深さを持って相手を射る。


赤いリップを引いたような唇が魅惑的な美しい……………医者?女医?



いやいや、声を聞く限り男だけどハスキーボイスの女性だっているわけだし。



スラーッと背が高くて多分オレと同じくらいあって、肌はさっきの看護婦さんと同じくらい白くてキレイだ。





やっぱ女?





いやいやいや。




いやいやいやいや?









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