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□無敵な無力
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昔はいっぱい、後悔をした。

若いから経験不足だったのだ。




まだ未熟で、何度悔しい思いをしたか。

だから俺は後悔しないよう完璧な大人になった。









戦闘だって、何度も怪我して死に損なって、攻撃される前に相手を殺せばいいってことを学んだ。

女も、何人もとっかえひっかえ色んなヤツの相手をして色々覚えた。



何をすれば足を開くのか、何を囁けば落ちるのか。



男だって試した。
屈強な男ですら快楽の前にはひれ伏すのだ。









俺の前に全ての者は適わない。

俺は、絶対の力を獲たのだ。









何もかもが思い通りにいった。

優越だった。




なのに、なぜ今更…。














コイツは俺の言うことを聞かない。


若さゆえの反抗心か。




コイツの強い眼差しがいけない。
俺の支配欲を酷く煽った。





気が付けば、親子ほど歳の離れたガキに夢中になっていた。


俺のものにしたい。

俺だけを見てほしい。









けれど、なんでもできるはずの完璧な俺は、いまだガキ一匹手懐けるのにに手こずっている。


あれだけ完璧を身につけたはずなのに、コイツには通用しないのだ。


思い通りいかないもどかしさに八つ当りばかりしていた。






そして、コイツは俺の元から離れた。










どうすればよかったのか。


虚空に叫んでもすでに遅く。
俺はまた後悔する。




















4年後。

再び出会えたことに、歓喜した。



少し成長したお前に、真っ先に今までの燻っていた思いを伝えた。


何度もいじめて喧嘩ばかりしたけど、あれは俺なりの愛情表現だったんだ。
お前のことが好きなんだ。



動揺しながらも素直に、はい、と答えてくれたよな。


今度こそお前を大切にしようと誓い、一緒に帰ろうと手を引いたら、振り払われた。


驚き立ちすくむ。







ここから離れることはできない。







泣きそうな面でそう言ったお前に、どうすることもできずただ、悔しさに震えた。




また俺は後悔するのか。












コイツを一人おいて俺は戻る。

いつか必ず迎えに行くと言ったものの、保証などない。




俺は悲嘆にくれた。











答えは


まだ



出ていない。












END


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いくら無敵を気取っても、所詮ただの人間にしか過ぎず、己の無力さに嘆くしかない。

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