Series 2
□獄 −the past−
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走っても走っても、追い付いてくる気配がある。
それは随分小さい頃からで、いつからか纏わりついて離れなくなっていた。
自分には兄が二人いて、双子の弟もいて楽しかったのに、ある日を境に全てが変わった。
【獄】
大きくなったある日、二番目の兄が死んだ。
殺し屋の家に生まれたのだから、他の人より死ぬのは早いだろうと子供ながらに悟っていたため、実際さほどの衝撃はなかった。
もちろん悲しかったが、一日泣いて、それで思い出になっていた。
弟も同じで、次の日には真面目な性格らしく、死んだ兄の代わりを勤めようと家のことをやるようになった。
俺は特にいつも通り変わらず好き放題やっていたのだが、少しして俺だけ士官学校に入れられた。
自分としては早く戦場に立ちたかったから、躊躇いもなくすぐに受け入れ通い始めた。
そこで俺は自由になった。
弟もいなく、兄の目もない。
長兄が死んでからどこか重苦しい空気が漂っていた家の中から出られる、それだけで心が軽くなった。
入学してどんどん訓練をこなし、成績トップですぐに実戦へと落とされた。
何もない、荒廃した大地をただひたすら走る。
重たい銃を抱え、宛てもなく走り、頭の中が空っぽになって、この時だけが全てから解放された気がした。
ここが俺の居場所だ。
ここでだけ生きる価値を見い出せる。
ここにいれば俺は呼吸が出来る。
それなのに、まとわりつく気配は心の隅に巣食って消えてくれなかった。
どんなに走っても、どんなに銃を打ち放とうとも消えてくれない。
俺を呼ぶ声。
死んだ兄が俺を呼んでいる。
呪いの言葉を残すため、兄は俺を呼んだ。
『兄を救ってくれ』
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