Treasure
□チョコレート・ロジック
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「どうしたの、日野さん?」
どうしたの、なんて
本当は分かり切っているはずなのに
あえて私の口から言葉を紡がせようとする
貴方は本当にズルイ人だ
「……柚木先輩に渡したいものがあるんです」
―――――――
「それで、渡したい物っていうのは何かな?」
優しい日差しが降り注ぐ大きな木の下
誰もいない昼下がりの森の広場
教室では人目につく(もしくは親衛隊の方々に睨まれる)ので、私は人気者の柚木先輩をこうして人気(ひとけ)の少ないところへと連れてきたのだった
「あの、その…」
言うべき言葉はもう決まっているのに、いざとなると喉元に詰っかえてしまう
そんな自分自身がもどかしくてあたふたしている私とは正反対
柚木先輩は優しく白い笑顔を浮かべていて
(あれ……?)
いつもなら既に意地悪い笑みを浮かべて嫌味のひとつでも言っているはずなのに
今日の先輩はみんなが知っている“イイヒト”のままで私を見つめてる
不思議に思って首を傾げた私を待っていたのは更に不思議な言葉だった
「クイズしてみない?」
「クイズ、ですか?」
やっぱり今日の先輩は変
だってクイズだなんて、いつもの先輩からは結び付きもしない言葉なのに
(何かあったのかな…?)
悶々とそんな事を考えている私を余所に先輩は問題を紡ぎ始めた
「今、君が後ろに隠している紙袋の中身は何でしょう?」
「えっ?!」