レイの神話
□レイの神話…0
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「ったくよぉ だからチャリンコはイヤなんだっ」
なぜだか突然前輪がパンクしたサイクリング車のハンドルとフォークの接続部を掴んで、それを引きながら、また亮はグチッた。
「んなこと言ったってしゃあねぇだろぉ、んなグチばっか言ってっと、オレら先ィ行っちまうぞぉ?なぁ、シン」
亮の右側で、彼と同じように自転車を引いている大野圭介が、反対側でやはり自転車を引っぱっている三田信也に声をかけた。
二人の自転車はパンクなどしていない。
「なんだよ…親友なら付き合えよ」
「ったくよぉ」
シンは唾をペッと吐き捨ててぼやく。
「今日は何の日だか知ってんのかよ? 新任の女教師が来る日だぜぇ! 噂じゃあすんげぇ美人だっつぅことなんだぜぇ! それをよぉ、こんな日に限ってパンクさせちまうなんてよッ! あと、歩くと20分はかかるんだぞ?」
「しゃあねぇだろぉがぁ好きでパンクさせたんじゃねぇやッ」
亮は言い返した。
「やぁめたッと。リョウに付き合うのヤメタ。行こうぜ、シン」
圭介と信也は自転車にまたがり、亮から離れて行った。
「このヤロッ ハクジョウモン
ヒトデナシィ バッキャロォー」
亮は文句を吐きながら、パンクしているにも関わらず自転車に跨がりこぎ始めた。前輪をガタガタいわせながら走り出す。
「ん〜〜〜〜ッ
うぉ〜〜〜ッ」
20bくらい走ると、彼はハンドルを持ち上げ前輪を浮かせた
ウィリーで、尚且つスクーター波の速さで先に行った二人を追い抜いてしまった。
「お、おい、ケイ、今の、
リョウでないの?」
まるでバケモノでも見たかのように、猛スピードで過ぎ去った亮の後ろ姿を見ながら信也が言った。
「そうらしいな…」
「あっ あいつ、電柱に抱き付いた…」
二人は2・300b先の亮が倒れている所まで行った。
「衝突したのかぁ…
電柱にヒビが入ってる」
「ダイジョウブか、リョウ?」
「だ、だいじょ〜ぶ…」
亮はふらふらと立ち上がった。
そして、三人は再び自転車を引いて歩き始めた。
「あぁ〜あ、もぉ使いモンになんねぇなぁ…だからチャリンコはイヤなんだ…」
亮の自転車は電柱に衝突しときの衝撃で、前輪はもちろん後輪までもがグシグシに歪んでしまい、フォークも折れハンドルも歪み、フレームは曲がり、チェーンは切れ、ペダルとサドルはもげてしまった。
十数分歩き、三人はやっと高校へたどり着いた。
すでに30分以上の遅刻であった。
つづく…