レイの神話
□レイの神話…7
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時刻は午後の七時を過ぎていた。
亮と美雪は、電車に乗って50分かかり、さらにバスで1時間近く走ったところにある綺麗な湖のほとりの、白いベンチに肩を寄せ合って座っていた。
なぜ突然この湖に来たのか、ふたりには判らなかった。ただ、足の赴くままに来てしまっただけ…のようにも思われるし、亮には、自分の脳裏……さらにその奥底の方で、何か、未知なる者の声に導かれたようにも思えていた。
空はもう暗くなっている。
街灯も点いて、その明かりに誘われた小さな羽虫たちが周りを飛んでいる。
さきほどから30分近く、ふたりはずっと黙ったまま、星や月のイミテーションが散らばる湖面を眺めていた。
黙ったままでも、ふたりは心テレパシストのように心と心で話し合っているようにも見える。
ふたりは本当に微笑んでいた。
最高の笑みを浮かべている。
言葉がなくとも、ふたりの手が動き、自然に重なり合っていた。
……見詰め合う。
「ね、亮……」
沈黙を破り、美雪が口を開いた。
「わたしって、素直じゃないでしょう?」
「なんで?」
「だって、今まで……ホントは亮のことが好きだったはずなのに……でも、そんなことないっていう振りばかりで」
「オレだって、そうだよ」
それは、おまえだけじゃない……
「素直な子と、そうでない子って言ったら、亮はやっぱり素直な子の方がいいんでしょ?」
「わかんないな。素直でも、そうじゃなくっても、その子にピッタリな性格ならそれでいいんじゃないかな? つまり、美雪は今の美雪のままでいいんだ。嫌われないようにしようとか、無理に取り繕う必要なんかない。
……とにかく、何も気にするなよ」
「うん、気にしない」
美雪は亮に聞いて安心したらしく、自分の頭を亮の肩に凭れかけさせた。
そんなふたりは、本当の恋人同士であった。
Bつづく…