短篇小説

□魂のカケラ
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…一年前…


 ユミと共に過ごせる時間は、オレにとっては何よりも大切なものになっていった…

 幸せだった…

 そんな事を思ったのは、生まれてこのかた、多分初めてかも知れない。
 それだけに、“アイツ”に対する申し訳なさは募るばかりだったが…
 だが、ただ幸せな事ばかりが続いていたワケではない。
 ユミに対する愛情が深まるにつれ、心配事も増えていった。
 それは、彼女が度々体調を崩して倒れる事だ。
 ユミ自身は、ただの貧血だからと言って、オレが医者を呼ぼうとするのを止める。
 幸い、意識を失うというわけではなかったが、倒れる頻度は徐々に増えていった。
 病院には定期的に通っているから、心配ないと言い張る。
 オレに出来るのは、やはり彼女のそばにいてあげる事ぐらい…
 それしか出来ない自分が歯がゆくもあった。

 もしも、彼女に何かあったら……

 そして、そんなオレの心配が現実のものとなる日が、ついにやって来てしまった……

 その日も、彼女はアパートの一室でオレの帰りを待っていてくれた…

“アイツ”とのような同居といったかたちではなかったが、ユミには合いカギを渡していた。
 オレが仕事から帰る時間には、いつでも彼女は来てくれていた。
 オレが部屋のドアを開けると、すぐに彼女の笑顔が飛込んでくる。
 オレも、つられて笑顔を見せていた。
 その日のユミは、いつにも増して楽しそう──いや、嬉しそうだった。
 なにかあったのか聞いてみたが、

「今は内緒♪」

 そんなふうに答えるだけだった。

 でも、理由なんてどうでもよかった。
 彼女が、ただ笑顔を見せてくれれば、それだけでよかったんだ…

 笑顔だけで…

 その笑顔が、不意に消えた……

 夕食をとって、二人で他愛もない話をしている時だった…
 彼女の顔からは見る間に血の気が失せていった。呼吸が乱れていた。

「ユミ…!? ユミッ!!」

 オレの声に応える様子もない…

 ──大丈夫……

 いつもの貧血の時のように、心配するオレを気遣う言葉を返してはくれない…

「ユミぃぃッ!!」

 オレは救急車を呼んだ…


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