短篇小説
□魂のカケラ
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…3年半前…
〜封印された記憶〜
「悪いが…止めとく」
久し振りに電話をかけて来た政人に、オレはそう応えた。
『どうしてだ? おまえが来なけりゃ意味ないだろう?』
彼女の七回忌…
オレにとっては重たい記憶だ…
『まだ気にしてるのか? おまえが責任を感じる必要なんてないはずだがな…。あれは──』
「とにかく、行くつもりはないから…」
最後にそれだけ言って、オレは携帯を切った。
忘れたいワケじゃないんだ…
ただ、オレにはそんな資格などないだけだ…
彼女を救ってやれなかったオレには……
──人を救う……?
傲慢だったな……そんな風に考えるなんて…
そもそもオレはただの、普通の人間だ。
神様でもなんでもありゃしない…
はなから人を救うなんて……出来るワケなかったんだ……
でも……
悪かったな…
何もしてやれなくて…
オレは、彼女の墓の前にいた。
七回忌には出るつもりはなかったが、墓参りだけはしておこうと思っていた。
政人から電話がかかって来たのは、調度寺に着いた頃だった。
オレは、ただ彼女に謝っていた。
何もしてやれなかったことを…
救うとか、そんな事じゃないんだ…
もっと、側に居てあげればよかったんだ…
失って初めて気付く…
失わなければ気付く事すら出来なかった自分自身に、ただただ腹が立つばかりだった…
彼女の死んだ理由──自殺した理由を、ホントは知っていた…
その理由を誰にも言わなかったのは、彼女が望んだことだからだ。
オレは、一生その事を心に秘めたまま生きて行かなければならない…
それが、オレに出来る唯一の事……何もしてやれなかった彼女に対する、罪の償い……
──誰にも、言わないから……
オレは、彼女にそう言い残して墓地を後にした。
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