短篇小説

□魂のカケラ
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 寺を出て少し歩くと車の通りの多い道に出る。
 その歩道にボンヤリと佇む一人の若い女性を見掛けた。
 オレはその女性の事が気に気になっていた。
 なぜかと言えば……そうだ……彼女に──死んだ彼女に、どことなく面影が似ていたからだ。

 その女性は思い詰めた表情で、次から次へと走り去る車を見ていた。
 その時にオレは気付いていた……
 その女性が何を考えているのかを…
 死んだ彼女とダブって見えたのも、もしかしたらそのせいもあるのかもしれない…
 彼女も、自殺を覚悟した時に同じような虚ろな目をしていたのか…?

 女性が、意を決したように足を一歩踏み出す…

 ヤメロ……!

 オレはただ、女性に向かって走り出していた。

「止めろッ!!」

 夢中だった…
 ただ、夢中だった…
 目の前の女性が、死んだ彼女にしか見えていなかった……

 また、死ぬのか…?

 もう……
 いいだろう……?

 気が付けば、オレは女性と共に道端に倒れ込んでいた…
体半分が車道に飛び出していたが、車は運よく避けて行ってくれた。

 女性のすすり泣きが微かに聞こえる。

 救かった…

 ホッとして立ち上がったその時だ──

 今の出来事に驚いて制御を失ったバイクがこちらに突っ込んできた──

 避ける隙もなかった…

 バイクに撥ねられながらも、女性が無事だったことに安堵していた…

 そうだ…
 その女性が“アイツ”だったんだ…

 それがオレと“アイツ”との、ホントの最初の出会いだったんだ…


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