短篇小説

□魂のカケラ
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…十ヶ月前…


 ユミは、あれからずっと入院したままだった。
命に別状はなかったものの、またいつ悪化するとも限らない。
 彼女なりに無理をしていて、それがたたったのだろうな…

 会いたい…
 側にいてやりたい…

 だが、見舞いにも行けずにいた。
 彼女の親に会うのが怖かったからだ。
“アイツ”が死んだのはオレのせいかもしれないと、未だにその思いが残っていた。
 病院に行けば鉢合わせする可能性が高い。どんな顔をして会えばいいのか分からなかった。

 ユミの具合いについては政人から毎日のように聞き出していた。
 体温や血圧が今日は低かった、高かった、安定しているから心配はないとか……食事をキチンと採ったか、残したか……それこそ事こまかに聞いていた。

『見舞いに来いよ』

 政人には電話の度に言われていた。

「会いたいさ…」

 でも、行けない…

『ユミさんには──今の彼女にはおまえが必要なんだ』

「オレは…」

 会えば…きっと……

『彼女はおまえが来るのを待ってるんだ』

 どうすればいいんだ…

『おまえが来るのを、待ち続けている』

 オレが行く事で、余計に彼女を苦しめることになるんじゃないか…?

「すまない…」

 ずっと側に居てやりたくても、そういうワケにもいかない…

 だが、そんな時だった。いつもはオレからかけていた政人からの電話があったのは……

 電話がかかって来たのは真夜中だった。
 もうすぐ日付も変わろうかという時間──

『ユミさんが……』

 いつもの落ち着いた、冷静な政人の口調とは違っていた。

「ユミが、どうかしたのか…!?」

 病状が悪化したとか、オレは悪い方に考えてしまっていたが……

『彼女が居なくなった……』

「いなくなった…?」

『病室を抜け出したらしいんだ。院内中探し回ったんだが、まだ見付かっていない』

「いつからいなくなったんだ?」

『最後に見たのは、三時間前の消灯時だった。その後、今から一時間前に看護士が見回りした時にははもういなかったらしい…』

 まさか……?

『おまえの所に行った可能性もあるんだ』

「分かった、捜してみるよ」


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