短篇小説

□魂のカケラ
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 ユミは、ここに向かってるんだろうか…?
 だとしたら、待っている方がいいのかも知れないのだが…
 遅くとも一時間前に病院を出たのならもう来ていてもよさそうな頃だ。病院からここまでは、ゆっくり歩いても30分足らずで来れるはず。

 なのに、まだ来ていないのは、他に向かっているのか、それとも──

 どうしても悪い方に考えてしまう……

 考えていても仕方がない…やはり、捜しにいくべきだろう…

 オレはアパートを飛び出していた。
 しかし、ユミの行きそうな場所に心当たりがあるのはひとつだけだ。
 アパートから病院への道を、周囲を見回しながら向かって行く。
 だが、見付ける事は出来ないまま、病院にたどり着いてしまった。

 他に、ユミの行きそうな場所ってあるのか?
 知っていたようで、オレは彼女の事を何一つ解ってやることすら出来ていなかったのかも知れない……

 オレはただ、闇雲に走り回っていた……

 ──何処に行けばいいんだ…?
 ──何処に行けばアイツに会えるんだ…?

“アイツ”……?

 ふと、“あの場所”が脳裏に浮かんだ…

“アイツ”と出会ったあの場所──

 オレの足は、考えるよりも先にそこへ向かって歩き出していた。

 待っている……
 そこで、オレを待っているはずだ…
 心細そうに、何かに怯えて…

“アイツ”も、そうだったはずだ…
 あまりにも苦しい運命から逃げ出したくて“誰か”に救いを求めていたに違いない…

 ──そうだよな……

 ユミだって、怖いはずだ……
 双子の姉と同じ運命を、自分も繰り返してしまうんじゃないかと…

 だから……
 逃げたいんだ……

 相変わらず薄暗い路地裏……人通りもない狭い道……切れかかった外灯の古い電球が点滅を繰り返している…

 彼女が、そこに居た……

 パジャマ姿のままで電柱の陰に蹲り、寒さと怖さに奮えていた…

「ユミ……」


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