短篇小説

□魂のカケラ
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「そんな事があったのか……」

 いまそれを政人に話して聞かせることにどんな意味があるのかは判らないが、伝えておきたかった。
 自分がただ楽になりたかっただけなのか、結花にとっては政人も親友の一人でもあったからなのか……

「でも、それだけで自殺するなんて──いや、彼女には、大きな理由だったのか……」

 政人にとってはまだ腑に落ちない事のようだが、もちろん理由はそれだけではなかった……そこまでは、オレも誰にも話すつもりはない。

「おまえ、ずっとその事を気にかけて……。それで、由美さんの側に居たいって……」

 あの日──
 あの時──
 オレが一緒に居てやれれば、結花を死なせずに済んだのかも……
 そんな思いに捕り憑かれていたのは、確かにあった。

「だからって、おまえがそこまで気にする必要は無いと思うが……」

 そうかも知れない…
 でも逆に、そう考える事で楽になろうとしていたようにも思える。
 他人にではなく、己れに責任を擦り付ける事で楽になろうとしていたんだろう。
 却ってその事に一番苦しめられる結果になったのは、自然の成り行き、自業自得だった。

「オレ、しばらく仕事休んで、ここに──ユミの側に居る」

「仕事を休むって……いいのか?」

「そうしないと、また多分──きっと、後悔すると思うんだ…」

 二度と繰り返したくはない……
 二度と──

 政人と別れて、オレは病室に戻った。

 薬がまだ効いているのか、由美はまだぐっすりと休んでいる。

 ずっと、そばに居るから……

 オレは、彼女の寝顔を見ながら、自分自身にそう誓っていた……


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