短篇小説
□魂のカケラ
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あれは、夢だったのだろうか…
いつの間にか、オレは眠っていたらしい…
夢なのか、現実なのかは、ハッキリとは判らなかった…
目の前に“アイツ”が居たんだ…
──ユカが、居た…
「ヨースケ…」
「ユカ…」
「心配しなくていいよ…ユミは、連れて行ったりしないから…」
「ユカ…ゴメンな…」
「謝らなくていいよ……わたし、幸せだったから……ヨースケと一緒にいた時間──ふたりで過ごした時間、とっても楽しかったから…」
「でも……何もしてやれなかった……」
「うぅん……わたしと一緒に居てくれただけで、充分……」
「それだけじゃ……」
「出会えただけで、幸せな事もあるの……わたしには、ヨースケがそうだったから…」
出会うだけの幸せ…
「それだけじゃなく、一緒に居てくれただけで、充分なんだ…」
そんな思いに、もっと早く気付いてやるべきだった…
「そうか…」
「ユミの事、幸せにしてあげてね」
「もちろんだ」
「わたしの分まで──なんて思わなくてもいいから……ユミは、ユミだから……わたしの、替わりじゃないから…」
「あぁ…そうだな…」
「だって、ヨースケ、パパになるんだもんね」
そうだ…
赤ちゃんが産まれて来るんだ…
ユミと子供を──二人を守って生きて行かなきゃ……
「ヨースケなら、きっと……」
「ユカ……」
「わたしが、一番よく知ってるから……」
そして、ユカは消え去ってしまった
もちろん、現実にそんなこと有り得るはずもない……
多分、オレの勝手な思い込みが見せた、幻想だったのだろう…
それでも、そんな風にユカと話が出来ただけでも、オレには嬉しかったんだ……
──それも、オレの勝手な幻想だろうな…
ただ、その後──
その後、目を覚ましたユミが言ったんだ…
『お姉ちゃんといっぱい話せて、よかったね』
…って、言ったんだ。
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