短篇小説

□魂のカケラ
4ページ/46ページ


 一度失ってしまったモノを追い求めるようなマネなどしたくはない…

 惨めなだけだ…

 過去に固執するなど、時間の無駄だ…

 かと言って未来に期待などするのも、また無駄な事だ…

 過去への固執は未だ見ぬみ未来への執着…
 未だ見ぬ未来への期待は過去への依存…

 過ぎ去りし戻らぬ日々に固執するあまりに、未だ見ぬ先に期待などしてしまう…

 次こそは、と…

 しかし、現実なんてそんなに甘くはない…

 それが、この世の中ってモンだ…

 憂鬱な時間が、ただ虚しく過ぎていく…
 カラッポの心の中を埋めてくれるモノなど何もありはしない…

 それが、このオレの日常だ…

 毎日毎日…同じことの繰り返し…

 だが、そんな事には慣れている…
 慣れて…いる……
 いや、慣れていた……

 そうだ……
“アイツ”と出会う前に戻っただけだ…

 戻っただけなんだ……

 なのに…
 何かが違う…

 何かが…違う……

 戻ってはいないのか?

 出会う前に戻るワケじゃないのか?

 何かが、違う…?

 出会わなければよかった…

 こんな思いをするぐらいならば、出会わなければよかった…

 人との別れには慣れている…

 なのに…

 別れる事よりも、出会ってしまった事を悔やんでいる…

 出会わなければ、よかった…

 そんな風に思ったのは、初めてだ…

 初めてだった……


“アイツ”と出会ったのは……

 そう…
 三年前だった…


B次ページ
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ