短篇小説
□魂のカケラ
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それからどれくらいの時間が過ぎたのだろうか…
彼女はいったい何を思っているのだろうか?
オレはどうしてここにいるのだろうか……
ただただ長いだけの時間の中で、オレはそんな事ばかり考えていた。
封を切ったばかりの煙草の中が半分以上空いてしまっていた。
何もする事がないから、ムヤミに煙草を吸ってしまう。
「寒く、ないか?」
そんな優しげな言葉を吐いてしまうのも、長い沈黙が続いた為だろう。
彼女はゆっくりと首を横に振る。
夏はとうに終わり、季節は既に秋も半ば…
時々冷たい風が通り過ぎていく。
なのに、よく見れば彼女は上に薄いカーディガンを羽織っているだけ…
寒くないワケはない。
細い肩が微かに奮えているのが解る。
「あそこ、入るか?」
オレはファミレスに視線を向けてから彼女に聞いた。
再び、彼女は首を横に振った。
「人の多い場所は、苦手なのか…?」
彼女が頷いた。
「そうか…」
だが、かと言ってずっとこのままってワケにもいかないだろう。
彼女は明らかに寒さに奮えている。
「うちに…来るか?」
なぜ、そう言ってしまったのかはわからない…
他に言うべき言葉が見付からなかったからだ…
そう、思っていた……
「別に何も──」
何もするつもりはないから──そんな言い訳を言う前に、彼女が頷いていた。
「そうか…」
オレの事を信用しきっているのだろうか?
安全な男だと思っているのだろうか?
──どっちにしろ、手を出すつもりなどまったくなかった…
その頃のオレは、女どころか、人間関係そのものにウンザリしていたからな……
結局、オレの住むアパートの狭い部屋に彼女を招き入れる事になった。
それが3年前……
オレと“アイツ”の最初の出会いだった…
それからしばらく、彼女との同居が始まった……
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