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□女の祭り?
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すると、鈍く重い音を響かせながら、何かがこちらに向かってくる。
修哉は嫌な予感がして和室から顔をのぞかせると、案の定梨華が大きな段ボール箱をあちこちにぶつけながらよたよたとこちらへ歩いてくる。
修哉は走っていって箱をもぎ取った。

「これ人形入ってんだろ?もっと丁重に扱えねぇのかよ」

「しょーがないじゃん、重いんだもん」

修哉も持ってみたが、確かに重い。
何と言うか…雛人形だけの重みとは思えない。

「…お前、これ本当に雛人形だけか?」

「んなわけないじゃーん!ママンの素晴らしい収納術で一年のお飾りは全部インよ!」

「はぁっ!?」

「お正月でしょー、節分に雛人形、こいのぼりと兜に…」

「もういいもういい!」

修哉はそれを聞いた途端、箱が更に重くなったような気がしてすぐに和室に下ろした。

「…何でそんな詰め込むんだよ…」

「ママンは無駄を作らないのさ!」

修哉はここにそのママンの作った唯一の無駄があるけどな、と心の中で呟いた。

「そいじゃ、出すかー!雛人形はどこかなぁー?」

勢いよく梨華が箱を開けると、その中は梨華の言う通り、みっちりと人形が敷き詰められている。

「うわ…本当すげぇな」

「でしょ?あ、あったあった」

梨華は紙にくるまった一対の人形と、ぼんぼりやら造花の桃の花やらを取り出した。

「ほい、紙取って」

渡されるがままに修哉は人形を受け取って、丁寧に紙をはがした。

「おー、久し振りだな、雛人形なんて」

「何なら毎年手伝いに来てもいいぞー」

「あー、遠慮するわ。てか嫌だ

もちろんキッパリと断る修哉。
だが梨華は聞いてはおらず、人形に夢中になっていた。

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