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□女の祭り?
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「おばさん、こんにちわー」
「あら梨華ちゃん、いらっしゃい。どうしたの?」
「あのね、修哉借りてっていい?」
「ああ、いいわよ、二階にいるから呼んで来るわね」
母が階段を上がる音に紛れて、部屋にこもる修哉は窓から逃げ出してしまいたくなっていた。
女の祭り?
母に呼ばれ、修哉が仕方なく部屋から出ると、梨華が待ち伏せていた。
親に会うときは、やっぱり普通の格好だ。
「じゃ、借りてきまーす!」
心なしか声も違う。
「ごゆっくり〜」
笑顔で手を振る脳天気で何も知らない母親を、修哉は少し恨んだ。
「で、何の用だよ?」
気付けば梨華の家の前、平然と修哉を連れこもうとする梨華。
「ほれ、もう桃の節句でないの。雛人形出すんだよ」
「当日に!?」
驚くと言うより呆れ返る修哉に、梨華は胸を張って答えた。
「今日出して今日しまう。ハイこれで嫁き遅れない!」
見た目いかにも頼もしそうだが、修哉には梨華の嫁ぎ先が哀れにしか思われなかった。
「と、言うわけで、手伝ってね!大丈夫、七段とか言わないから」
「七段だったら俺何としても帰る」
そんなこと無理だろうけど、なんて思いながら修哉はドアを開けた梨華に続いて家に上がった。
「ただいまー」
「お邪魔します」
「じゃリビングの隣の和室行ってて、今箱持ってくるから」
「あいよ」
修哉は逃げるチャンスだなとかぼんやり考えながら、後が恐いのでおとなしく和室に座り込んだ。
梨華の母がお茶やら菓子やら持ち込んでくれたのを丁寧に受け取って梨華を待つ。