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□お返しは?
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気持ちよく晴れたこの三月十四日、内心曇り空の男が一人。
それが、学校に行く支度をしつつも出るのを渋っている先坂修哉だった。
お返しは?
恐怖のバレンタインデーから早一ヶ月、幼馴染みの梨華から意地悪こそ含まれていたもののまともなものを貰ってしまった修哉は、そのお返しに困っていた。
三月の頭からずっと考えてはいたが、梨華の好みなんて逆立ちしてもわからず、結局当日が来てしまったのだ。
ちなみに親衛隊へのお返しも用意していないが、それは特に気に止めていない。
親衛隊は梨華のように仕返しなんてしてはこないのだから。
「出たら絶対いるよな…アイツのことだから」
だが今日は平日で、当然学校に行かなければならない。
修哉はこのままだと遅刻しかねないので仕方なく家のドアに手をかけた。
「おっ、今日は遅いねぇ修哉!」
「…待ち伏せしてたのかよ」
もちろん家の近くに突っ立っていた梨華に、わかってはいたが落胆する修哉。
「一緒に行って欲しいってオーラが修哉の部屋から出てたんよ!」
「残念だな、その逆のオーラだ」
何だか梨華に会うとまるで掃除機のように生気を吸い取られている気さえする修哉。
しかもその梨華が、いつになく輝かしい少女のような瞳で自分を見つめてくるのだから尚更だ。