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□織姫と彦星?
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学校からの帰り道、修哉は妙な歌に引き止められた。
「りーとるじょーにーうぉんつーぷれー、れーいんれーいんごーあーうぇー」
織姫と彦星?
「…近所迷惑と恥を考えろよ梨華」
なるべく梨華とは他人に見えるよう距離を保つ修哉。しかし、梨華は大声で手を振りながら走ってくる。
「よっ、修哉!梅雨前線はどうなった?」
「知るかよ!!」
梨華にとって俺は気象予報士なのかと虚しくなる修哉。
だが梨華はおかまいなしに何か考えている。
「んー、困ったなぁー。今日雨降んのかなー」
「何でそんなん気にしてんだよ?」
もう夕方だし、家ももうすぐそこなのに、雨なんて気にしてどうするんだ、と修哉が聞くと、梨華は途端に目を丸くした。それから、修哉の顎を下から思いっきり殴った。
「ッ!?」
「空に謝れバッカもーん!!」
修哉は顎の痛みと梨華の理解不能な言語により一瞬パニックに陥った。
「今日は雲の向こうが一年で一番ロマンチックな日、七夕じゃあないの!」
「あぁ…てか…痛」
「チミはこのロマン溢れる日を忘れたとか言うのかね?」
「いや…何かもう…すげぇ忘れたい」
修哉はやや涙目だった。
「雨だと天の川見えないのよねぇー」
梨華はどこからか取り出した星座早見盤の天の川を目でたどっている。
修哉はやっと正常を取り戻した。
「そういや七夕か…」
「あ。修哉はそれに便乗したあのどんちゃん騒ぎに参加するの?」
「いや七夕祭って言えよ」
「…行くの?」
「んー、行かねぇかな」
修哉が少し考えてから答えると、梨華は驚嘆の声を上げた。
「はぁ!?女はどうした、女は!」
「何を当然のように言ってんだお前は」
修哉は呆れ、眉をしかめて返した。
「…女なんかいねぇっつーの」