「Good morning Syuya!」

「…朝っぱらからその変な巻き舌やめろ」

冷ややかにそう言ってマフラーを巻き直す修哉。梨華は教科書片手に呪文のように英語を唱えていた。

「今日小テストだよ?」

「筆記のな」

「チミ、テストだけに執着してはいけないな」

「執着してんのどっちだよ」

相変わらず修哉のツッコミに耳もくれない梨華は、ぺらぺらと教科書をめくる。

「しょーがないな、私が特別にテスト対策をしてやろう」

梨華は教科書を握り締めたまま修哉の前をスキップしていく。
いらねぇよ、眉間にシワを寄せた修哉に対し、

「あ、じゃこの教科書いらないのね?」

梨華はにんまり。

「え、それ、」

「そ。修ちゃんの♪」

「はぁ!?いつの間に…ってか返せ!!」

修哉は鞄をひっくり返す勢いで探したが、やはり教科書はないようだ。取る隙もなかったはずだが。
小テストなのにこれはマズい。修哉はまだ覚めていない体で少し先を軽やかにスキップしていく梨華を追いかけた。

「修哉!」

「何だよ!」

走りながら名前を読んだと思ったら、梨華はまたやけに流暢(な気がするよう)な英語で修哉に問いかける。

「Why are you so mean to me?」

「はぁ!?」

「意味を答えよ!」

いきなりそう言われて、修哉は頭に叩き込んだテスト範囲を必死に探る。範囲にはそんな文はなかったはずだ。

「し、知らねぇよ!」

すると梨華は教えてやるぜ、とばかりにキラキラした笑顔。

「『何であなたはそんなに意地悪なの?』だよ☆」

「な…っ、それは俺のセリフだー!!」

答えを言い捨てるや否や突然走り出した梨華を追いかけて、修哉も全力で走る。梨華はこういうときだけ、妙に足が早いのだ。

「早く取りにおいで、修ちゃーん!」

梨華の笑い声が、鶏の如く朝の通学路にこだました。



(つうか何でそんな変な文知ってるんだよ…!)



***
こういう「いつ使うの?」みたいな変な文覚えるのが好きでした(笑)


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