firstcafe

□★悲しみBLUE
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「美貴、俺、結婚するんだ・・・」

明るい陽射が差し込むカフェのテラスで告げられたのは

光一と私以外の女との結婚。

「どんな人なの?」

感情の無い瞳でたずねる私に嬉しそうに話す光一

「取引先の社長の娘さんなんだ。可愛くて上品なお嬢様さ」

悪びれること無く飄々とした表情で話す光一。

「アナタハ  ダレト  ケッコン  スルノ?」

そう心の中で繰り返しながら

私は五年前のあの日のことを思い出していた。



まだ、大学生だった私たちは

ゼミの先輩の結婚式の受付の手伝いをしていた。

結婚式が終わり、チャペルから出て来た先輩達。

ライスシャワーの中、

花嫁さんの投げたブーケが私たちの前に落ちた。

光一は少し照れた顔でブーケを拾って言ってくれたの。

「・・・いつかこのチャペルで俺達も結婚式をあげような。

新婚旅行は南の島に行ってさ。

ここのホテル豪華で有名だから金、二人で貯めないとな」

そう言ってくれたの。

そう、あの日から光一とあのチャペルで結婚式をあげるのを夢みて頑張ったんだよ。

学生時代も社会人になってからも一生懸命働いて節約してきたの。

お洒落だって我慢して

スーパーの衣料品コーナーの特売でスーツを買って、

デートだってお弁当持って海沿いの公園に行ったよね。

たまにはディナーを外で食べたかったけれど、

スーパーのタイムサービスのお肉で

料理本片手にビストロみたいな夕食を作ったこともあったよね。

寒い冬の夜は抱き合って眠ったね。

お金はなかったけれど、私、幸せだったよ。

だって、いつかあのチャペルで

光一のお嫁さんになれるって信じてたから・・・
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