テニプリのお部屋

□十六夜
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『景吾さん、お月見してみたいわ』


滅多に口にすることのないお前のわがまま

それを叶えるために、

まだまだ蒸し暑い空気の残る街から逃げるように車を跳ばし、

夜風が心地よい郊外の小川のせせらぎの辺にやってきた。

月は薄くベールを被り、頼りなげな灯りの中、

お前は下駄を小さくカラコロ鳴らしながら歩く。

薄明かりの中、浴衣に合わせて結い上げた髪と後れ毛、

白いうなじが柔らかな光を放つように浮かび上がる



『きれいやねぇ・・・』

呟くお前

「お前の方がもっと綺麗だ」

そう告げたらお前はどんな顔をするだろう

俺とお前は親が決めた許嫁同士。

お前にとって、家の利害関係のみに縛られた関係

それ以上でもそれ以下でもなくて・・・

俺がお前に

「好きだ」

そう告げたら・・・


不意にお前の姿が俺の目の前から消える幻想を見る


「・・・・・・!!」


慌てて肩を掴んだ俺を、お前は不思議そうに見上げた
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