テニプリのお部屋
□十六夜
1ページ/4ページ
『景吾さん、お月見してみたいわ』
滅多に口にすることのないお前のわがまま
それを叶えるために、
まだまだ蒸し暑い空気の残る街から逃げるように車を跳ばし、
夜風が心地よい郊外の小川のせせらぎの辺にやってきた。
月は薄くベールを被り、頼りなげな灯りの中、
お前は下駄を小さくカラコロ鳴らしながら歩く。
薄明かりの中、浴衣に合わせて結い上げた髪と後れ毛、
白いうなじが柔らかな光を放つように浮かび上がる
『きれいやねぇ・・・』
呟くお前
「お前の方がもっと綺麗だ」
そう告げたらお前はどんな顔をするだろう
俺とお前は親が決めた許嫁同士。
お前にとって、家の利害関係のみに縛られた関係
それ以上でもそれ以下でもなくて・・・
俺がお前に
「好きだ」
そう告げたら・・・
不意にお前の姿が俺の目の前から消える幻想を見る
「・・・・・・!!」
慌てて肩を掴んだ俺を、お前は不思議そうに見上げた