ときメモGSのお部屋

□声が聞きたくて
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声が聞きたくて

「ねえねえ そこのカッコイイお兄さん!」

「・・・・・?」

珪は周りを見回し、誰もいないのを確かめると、自分のことかと振り返った。

土曜の午後のはばたき児童公園、
 
桜吹雪の中、スケートボードをかかえた少し大人びた瞳の少年が立っていた。

自分に小学生の知り合いはいないはずだ。お兄さんと呼びかけてくることからも

少年も 知り合いだからと話しかけてきたわけではないようだ。

けれど何故か妙に懐かしさを感じる少年の瞳。

不思議に思い 少年を見つめる。

「どうかした?俺ってトップモデルの葉月 珪が見とれるほどイイ男?」

少年はちょっと いたずらっぽい微笑を浮かべた。

「・・・・・?」

「・・・まあ いっか・・・」

何も答えない珪にあきらめたのか 少年は小さくため息をつくとハーフパンツのポケット

から 小さなメモを取り出した。

「これやるよ。葉月にプレゼント。きっと損はしないと思うぜ。」

少年はちょっと強引に珪にメモを握らせた。受け取ってみると 

携帯電話の番号らしき数字がちょっと丸いかわいい文字でならんでいる。

「・・・・・?」

「騙されたと思って かけてみてよ。」

(・・・騙されているのか?)

「俺が言うのもなんだけど 後悔はしないと思うぜ。・・・モトはイイから。」

「・・・モト?」

「そうだなあ、一回かけてみてよ。あとは葉月にまかせるからさ。

じゃあ そういうことで よろしく!」

そういうと少年はスケートボードでなだらかな坂道をおりていった。

(・・・どうするか?)

珪は渡されたメモの文字を少しの間眺める。こんな形で渡された番号に電話することは

普段なら 絶対に考えられないことだ。

だが、あの少年に感じる不思議な懐かしさに珪は記憶の糸をたどってみる。

閉じた瞳の奥にある少女の笑顔が浮かんだ。

「あいつか?・・・」

珪はゆっくりと微笑むと ポケットから携帯電話を取り出し

整った細く長い指でメモのとおりの番号を押し始めた。

大好きな ずっと大切に思ってきた そして再びめぐり合えた

あの少女の優しい笑顔を想いがら・・・

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