ときメモGSのお部屋

□もっとそばにいて・・・
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『なあ、花火大会、一緒に行かないか?』

葉月に誘われたのは終業式の帰り道、急に無口になった後の一言だった。

無口の時の葉月は、気嫌の悪いことの方が多いので美貴にとっては以外だった。

「ねえ、花火大会だけじゃなくて海や遊園地も一緒に行きたいよね。

珪は夏休み中、モデルのバイト、忙しいの?」

屈託無く笑顔を向ける美貴に葉月の口元も自然に緩み彼らしくない穏やかな表

情になる。

「そうだな、花火も遊園地のパレードもいいな・・・・おまえとずっと一緒に

夜遅くまでいられるから・・・」

葉月がいつものぼそぼそっとしたしゃべり方でしれっと言うと美貴の目元が

ぽっと朱をさす。

「もう、珪ったら、よくそんな恥ずかしいこと平気な顔でいえるね。

信じられないよぉ」

美貴はドンドンと葉月の肩を叩くが葉月はまるでそれを楽しむかのように

微笑む。

「あっ、海は却下な!」


葉月がちょっといたずらっぽい表情で言う。

「え〜っ、それならプールがいいな!だって、暑いんだもん。」

葉月の真意に気づいていない美貴はプーっと膨れながら言う。

「プールも却下。おまえの水着姿、他のヤツになんかに見せたくない・・・」

葉月は急に表情を曇らせ、小さく呟くと足早に歩き始める。

葉月の心の揺れに気づいていない美貴は悲しげな瞳を葉月の背中に向け、

俯いて肩を振るわせる。

それでも、なんとか気を取り直し葉月の後ろ姿を追うが、だんだんと背の高い

葉月の背中が小さくなってゆく。

葉月の気嫌を損ねた理由がわからない。

「せっかく誘ってもらったのに怒らせちゃった・・・・何で気を悪くしたの?」

美貴は溢れる涙を止められず児童公園のベンチに座り込んでしまった。その時、

聞き慣れた着メロが・・・

「珪くん?」

美貴が訝しげな表情で携帯に出ると、少し気弱な葉月の声が飛び込んでくる。

「さっきはごめん・・・俺・・・おまえにいろいろ誘ってもらって嬉しかった・・・

けど、おまえ、海とかプールとか言ってはしゃいでいるから・・・」

葉月はそこで暫く黙り込む。

「おまえ、ほんとにわかってないのか?」

葉月は深いため息を一つつくと気を取り直したように

「わかった。海、行くか?次の日曜ならバイトないから・・・

おまえが行きたいなら海、つれつってやる。」

突然の葉月からの誘いに少し驚きながらも美貴の表情には穏やかな微笑みが

戻っていた

「うん。珪くん、ありがとう。楽しみにしてるね」

嬉しそうな美貴の声に葉月は複雑な思いを感じながらも微笑んでいた。

「仕方ないやつだな。あいつの水着姿、誰にも見せたくない。けど、

海は危ないこと教えないと・・・・

俺以外のヤツは危ないことわからせないと・・・・

けど 俺、ほんとにあいつの水着姿見て大丈夫なのか?

可愛すぎて、あいつを壊してしまわないか、あいつを泣かせてしまわないか・・・

俺、自信ない」

葉月はふっと切なげな瞳でもう切れてしまった携帯を見つめていた
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