蜜蝋

□寛にたゆたに
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冷えていく

吸い込んだ喉から肺
指先も髪の毛も何もかも
触れれば音を立てて砕けそうな程に

心は何処へ行ったかな
子供でいられた唯一の場所
記憶の残滓に縋り付いても
掴んだ筈の掌は紅く濡れて


思い出したように、

俺は急速に冷えていく








日番谷&乱菊

寛にたゆたに
ユタ ニ タユタ ニ








「あ、隊長良いところに」

……松本の"良いところ"が本当に良かった試しは未だかつて一度もないので、俺はまた何か面倒事を押し付けられるんじゃないかと溜息を吐いた。

「あ〜溜息なんか吐いちゃって〜シアワセ逃げちゃいますよ」
「…………」
「眉間にシワまで寄せちゃって!んもぅ隊長ったら真面目にお仕事し過ぎなんですよ、お疲れなんですね」
「……誰かさんが仕事放ったらかしたツケが俺に回って来てるだけなんだよ」
「誰ですかねぇ、隊長かわいそ」

「用件を言え用件を」
「これから皆でお鍋するんですけど、隊長も一緒に来ません?」

松本は手で御猪口を煽る動作を付けながら笑った。
……生憎俺はそんな気分じゃない。「皆でお鍋」の「皆」が誰なのかにも興味がない。
大半がこいつの所為で山のように積まれたままだった書類を、三日間徹夜同然で仕上げた後だ、正直帰りたい。

「俺はいい」
「また隊長ったら、いけず
「お前は行けばいいだろう」
「そんな〜他の隊長も皆来るんですよ?ウチだけ来ないなんて困りますぅ」
「困れ」
「今日はフグですよ、フグ!現世で食べたあの味が忘れられなくて下っ端におつかい行かせてまで買って来たんですから!」
「知るか……っておい!襟を掴むな!」
「隊長の日頃のストレスを発散させるのも副隊長たるあたしの務めですからよいしょ
「ストレスの原因が何を言っ……だから!引き摺るな!」









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