蜜蝋

□南龍生堂日報
2ページ/2ページ

…大学へ入ってから、岸本はオンナに目覚めてしもた。なんやアホみたいにソレの事しか考えてへん。モテへん男の誰もが通る道やんな、ほんま猿やわ。学部が違うのもあって、高校みたいにつるんでる事も少なくなった。
…俺はバスケ部には入ってへんし。
その時、店のあちこちを見ていた岸本が、不意に切り出した。
「今夏のインターハイ、観に行かへんのんか」
「…何や急に」
「豊玉は予選で負けてしもたけどな、昨年の覇者、土屋んトコの後輩やら…陵南の仙道も最後の夏やしな」
「おい猿、ごまんえんになります」
「誰が猿やねん。あとホレ、湘北も出よるで」
レジ打ちをする俺の手ぇが止まる。湘北。
「センターあの桜木らしいで。観に行きたない?」
「おつり」
「ナガレカワが今夏こそ高校No1かも知れんで」
…ナガレカワ…!俺の手ぇがまた止まる。岸本はニヤニヤしながら店を出て行く。出て行きしがなに、振り向いてこう言った。
「南もズル休みせんと、顔出しぃ。また皆でやろうや」

店の中が静かになった。
俺はじっと掌を見る。
…大阪得点王。
岸本、俺あそこで自分は燃え尽きた思うとった。なんか…終った気ぃしてたんや、俺の中で何かが。
終ってへんのんか?
まだバスケやってても…ええんかなぁ…


「ツヨシ〜ただいま〜。お昼冷やし中華でええか〜ってあんたこれから出掛けるんか?…ジャージ着て…」


何処でだって誰とだって、なんでだってええんや。資格あるとかないとか、もうあんま小難しい事考えんと、好きなモンを好きにやったらええんや。まぁた俺忘れてたわ、バスケって楽しいモンやった。
そうやんな?北野さん。

「岸本!1on1の相手せぇ」



END.
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ