漆黒

□C O N T A S
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Liebe ist Qual,Lieblosigkeitist Tod.
──Marie von Ebner Eschenbach




君の
犯した罪や 受けるべき咎や胸の憂いなんかは
みんな僕がとってあげる
だから全部言って 残さず言って
そんなに抱え込まないで

君が
己の甘さや小ささに泣いているのを知ってるよ
諦めて俯かずに僕を呼ぶんだよ
きっと何処にいても飛んでゆくよ

君を
永遠の彼方へ連れて征くよ
いつか来る終焉を超えて
僕は君を抱き締める

僕は 君と 共に在る



愛しているよ、アベル





火星植民団編/愛三部作B-完結-


C O N T A S
caseV.Abel Nightroad








地球からの物資援助・供給はおろか、通信が途絶えてからどのくらい経つのだろう。
いつからか数えるのを止めた植民団は、内部で対立を繰り返し、焦燥と混乱の中にいた。

「だがいつまでもこうしているワケにはいかないだろう?」

ドーム内会議室。
アベルは兄妹とリリスに向き合い、プロジェクターの図面を差した。
「帰還船の修繕をしたい」

……アベルのその言葉に、リリスは胸に手を充てた。啀み合う事でしか自分の存在理由を表わせなかった彼が、地球に還ろうと、皆で還ろうと、提案してくれたのだ。
リリスは喜びを噛み締めるように、そっと目蓋を閉じた。

「しつもーん。あのボロボロのボディじゃ大気圏突入時の衝撃と高温に耐えられないと思いまーす」
アベルと帰還船の図面を交互に見ていたセスが手を挙げた。アベルは頷く。
「火星と木星の間…小惑星帯(アステロイドベルト)から、質量の小さな惑星を引っ張ってきて船体外皮に使う」
「マジで言ってる?…じゃあそれを飛ばすのはどうすんの」
「………帰還船を再利用するしかないね」

それまで黙って様子を伺っていたカインが、白い円卓に頬杖を付いて足を組みかえた。
「5気筒クラスターロケットをアステロイド(小惑星)に接続。燃料タンクは、アルミライナを炭素繊維強化プラスチックで覆った複合材極低温タンクを使用する…アベル、エンジンや燃料はどうする?」
「推進剤には液体酸素と液体水素のハイブリッドで…」
「水素推進系?水素は密度が小さいからタンクを大きくする必要があるわ」
「軽量化したいな……アベル、液化天然ガスかアルコールを使おう。セス、帰還船の制御システムはどの程度使えそうだい?」
コントロールパネルの前に座ったセスは、カインの問い掛けに力なく首を振る。
「軌道制御システムポッドがイカレてる。どうやら"方舟"の制御系統を持ってくるしかなさそうだね…さて、どうする?」
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