漆黒

□s c h w a r z
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死屍を追う蛆虫の群が
音高く這うように
我は進んで攻撃し 攀じては襲う
おお 和らげる事の出来ぬ残酷な獣よ

我はその冷酷さえも愛するし
冷酷だからいよいよお前が美しい



──シャルル・ボヲドレェル『惡の華』





騎士団番外短篇


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ゲルマニクス王国、首都ベルリン。
市内、ホテルの一室。


「ベルリンに拠点を置きたいって、それはまたどうして?」

「死はドイツから来たマイスター、─ツェラン。…かつてフランク王国が分裂、神聖ローマ帝国が誕生し、やがてプロイセンを中心に成立。その後の独裁政権、侵略と略奪の日々…敗北。東西に分裂したかと思えば、統合され…今でこそ農耕がメインとなっているこの国・ゲルマニクスは、常に歴史の鍵を握る存在だったのです、カイン様」

「……アイザック〜、キミそんな事言ってまた歴史で遊ぼうとしてるね?隠したって無駄だよ!だってキミってばニヤニヤしてるもの」

「いえ-ナイン-、遊ぶだなんて滅相も御座居ません。カイン様の故郷こそが我々に最も相応しい舞台だと考えた、それだけの事です。幸い私にも土地勘はありますし」

「そこが一番胡散臭いんだよ。で、どうするって?」

「無論、まずはこの国を頂戴致しましょう」

「ふぅん、国王ヴィルヘルムに、僕らにこの国を頂戴!って云うの?くれるかなぁ」

「堂々と正面から挨拶には伺えないでしょうね。取り敢えずいつまでもホテル暮らしではそのお身体には酷でしょう、何処かのフリーメイソンを乗っ取って拠点を築き、カイン様の復活を待つ一方で国王に罠を仕掛けましょう」

「へぇ、その話を聞かせてくれるかい?ああ、短めに頼むよ」

「技術の提供ですよ。化学、機械、電気、鉄鋼…我々のダミー会社をいくつか建て、国と産業契約を結ばせるのです。軍備の重要さを説き、工業化を勧め、巨大な軍事国家建設の第一歩を踏み出した後は…オストマルクあたりを併合致しましょう」

「なんだか面倒だな…この"容れ物"さえなんとかなれば手っ取り早いのに」

「そちらに関しましても調査済みです。大災厄前の遺失技術を集めている人物がミラノにおります。スフォルツァという男で、もしかすると彼の居城に…」

「リリス!」

「ご名答。弟君も同時に回収可能かも知れません」

「彼は生きてるよ!僕には解るんだ、彼は生きてる。ああ、早く逢いたいな…まだ怒ってるのかな?それともまた兄弟仲良く暮らせるかな?なんだか楽しくなってきたよ、アイザック!」

「それはよう御座居ました」


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